4期・66冊目 『アンドロメダ病原体』

アンドロメダ病原体 (ハヤカワ文庫 SF (208))

アンドロメダ病原体 (ハヤカワ文庫 SF (208))

人工衛星がある田舎町に墜落。回収に赴いたチームは町の住民がほぼ死に絶えていることを報告した直後に通信が途絶える。
その衛生には地球圏外からの微生物が付着しており、その正体を調べるために最新の技術によって作られた極秘施設にたった2人の生存者(老人と赤ん坊)とともに運ばれ、収集された専門家たちによる分析が始まる。


空気感染によって人間の全ての血を凝固させて死に至らしめる未知の病原体。
それを完全隔離された施設の中で最新のコンピュータ・テクノロジーを駆使して解析していく専門家たちによるドキュメントという体裁を持ったSFサスペンスです。
まずこれが60年代に書かれたということが驚き。*1科学については門外漢ですが、21世紀の今日においてこのような事件が起きて密かに隠蔽されていても不思議ではなさそうですね。
専門分野ごとに実験を繰り返して徐々に特徴を掴んでいく。そこには物語的な起伏には欠けるものの、科学に基づいて証明していくプロセスに論理的な面白さがあります。


また、機械技術がいくら進歩しても、判断を行うのは人間ゆえに、調査結果からヒントを読み取る観察力、そして些細なミスによる影響も重要な要素になっていますね。専門家たちの行動に関して、さりげなく行く末をちらつかせる演出もにくい。
結果的に病原体は人間たちの予想を覆す正体を見せて終わるのですが、ややあっさりとした幕切れだったように感じました。まぁ科学の限界というか、宇宙の未だ知られざる神秘を知らしめた結末でしたね。

*1:しかもあとがきによると、著者が学生時代に発表したデビュー作。ちなみに後の作品には「ジュラシック・パーク」がある