横山信義 『連合艦隊西進す3-スエズの彼方』

英本土奪回を目指す日本・イギリス連合軍にはスエズ運河を押さえ、地中海への航路を確保する必要がある。だが連合軍の前に、北アフリカを堅守するドイツ・イタリア枢軸軍が立ち塞がる!

前巻で立ち塞がるフランス艦隊を撃破し、アフリカ北東岸の要衝ジブチを攻略した日英軍。次なる目標はエジプトです。
幾度となくUボートによる損害を出しながらも、なんとかスエズ運河を押さえるところまで来ました。
しかし、運河を出たところで敵が待ち構えているのは必定。地中海進出のためには避けては通れない難所でした。エジプト失陥を恐れるドイツ・イタリア軍も必死の防戦に努めて援軍を送ってきます。

ということで、ついに登場した6号ティガー戦車ですね。日本陸軍アメリカのシャーマン戦車を装備しています。今までの九七式と比べると、各段の性能ですが、3号戦車はともかくティガーには敵いません。
そこで意外な航空機が活躍して撃退したのが良かったですね。
陸・海軍ともにあてにならない印象のイタリア軍も、小規模となると奮戦すると言われます。今回は魚雷艇と日本の水雷艦隊という珍しい戦いぶりもありました。

とはいえ、本シリーズで多く割かれているのがUボートと対潜部隊の戦い。スエズ運河を出るのも、やはりUボートとの戦いを制する必要がありました。
日本海軍の対潜戦術も史実とはくらべものにならなくなっているでしょうね。
運河の出口を抑えた後、ついに有力な水上艦隊がやってきて、ポートサイドを巡る決戦となりました。中東方面からはイギリス陸軍。南から日本陸軍が北上して合流を目指します。

今回のクライマックスはポートサイド沖海戦。酷使されることの多い戦艦金剛・榛名だけでなく、長門陸奥の活躍が見られたのが良かったですね。今までのシリーズでは、米鋭戦艦に苦戦する場面が多かったので。
とはいえ相手はイタリアの新鋭戦艦であり、そう簡単に勝てる相手ではありません。ただ、英米海軍ならともかく、イタリアの戦艦相手に敗北するのだけは見たくないなと思ってしまいます(笑)

それにしても、日本軍の輸送範囲は長大になって大変そうですね。ジブチスエズ運河を抑えるまでは、インド洋でのUボートとの攻防があり、沈められた輸送船もかなりあったに違いありません。
アメリカが完全中立となって連合国・枢軸国への輸出で儲けているようです。日本も戦車以外に様々な軍需品を購入していますが、駆逐艦や輸送船も買い入れてそう。
さらに今回は戦時急造型の空母を量産していく描写があったので、それがイギリスやドイツ・イタリアに渡って、同型艦同士の戦いとか発生するんでしょうかね。