3期・84冊目 『フリークス』

フリークス (光文社文庫)

フリークス (光文社文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
「J・Mを殺したのは誰か?」。私が読んだ患者の原稿は、その一文で結ばれていた。解決篇の欠落した推理小説のように…。J・Mは、自分より醜い怪物を造るため、5人の子供に人体改造を施した異常な科学者。奴を惨殺したのは、どの子供なのか?―小説家の私と探偵の彼が解明する衝撃の真相!(表題作)夢現、狂気と正常を往還する物語。読者はきっと眩暈する。

  • 突然狂って夫を殺害し今は療養中の母親のもとを訪れる青年。
  • 車の事故により相方を失い、自身も全身大やけどの上、記憶喪失によって自分が誰なのかわからない人物。
  • 入院患者の書いた奇怪な原稿を読み、欠落した事件の結末を推理する作家とその相棒。


3編ともに精神病院が舞台ということですが、始まりこそ案外まともそうな人物の視点で始まり、だんだんと雲行きがおかしくなり、最後にしてやられる展開です。
よくぞこんなストーリーを考えつくものだというのもありますが、共通して感じるのは心のバランスの危うさでしょうか。記憶とはもともと曖昧なものではありますが、いくつもの積み重ねによって、過去だと信じていたのがちょっとしたきっかけで脆くも崩れ去っていく。また心に大きなショックを受けた場合は全く別の思い込みで精神のバランスを保ったりする。特に2番目の話は途中までいろいろと結末を想像していながら最後にどんでん返しされて驚きました。
最後の話はミステリとしても楽しめますね。また、推理とは別に不思議な相棒の正体がとても気になるのです。