3期・61冊目 『容疑者Xの献身』

容疑者Xの献身 (文春文庫)

容疑者Xの献身 (文春文庫)

出版社 / 著者からの内容紹介
数学だけが生きがいだった男の純愛ミステリ
天才数学者でありながらさえない高校教師に甘んじる石神は愛した女を守るため完全犯罪を目論む。湯川は果たして真実に迫れるか

冒頭、別れた夫婦間のトラブルから発生した殺人を察知した男性(石神)は、ひそかに憧れる女性のために、隠蔽工作を行うという出だし。突発的な犯罪ではあり、常識的に考えていくら証拠隠滅やアリバイ工作に頭をひねったところで警察をだまし通せるほど甘くはないことはわかります。
話の筋からして犯人が明らかになっている以上、あとは石神がどんな手法を編み出したのかが見所であり、一転犯罪を追う側(草薙・湯川)からの記述が始まります。やはりというか、早々に女性が疑われるのですが、綻びが見えそうでなかなか決めてが出ないことが最後まで非常に気になるのですね。一般の人ならばどんなに凝ったシナリオを用意してあろうが、実際に罪を犯した以上は警察の目をごまかせるものではないでしょうから。


そこで袋小路にはまった警察とは別に独自に調べていた湯川によっていくつかの疑問点が示唆されるのですが、読んでいて妙な違和感を抱くものの、結局わからないのです。*1
最後の種明かしでやっと納得がいくのですが、そこまでするか!?という驚きの展開と結末。何といっても愛する人のために自らのすべてを犠牲にした石神のせつなさが胸を打ちます。*2
大学の同級生にしてライバルとも言えた湯川と石神のエピソードも含めて、さすが東野圭吾と言っていいか。最近読んだ著者の犯罪が絡む小説の中では納得がいく結末でしょうかね。

*1:トリックの肝心なところは最後まで明かされないから

*2:これ、微妙にネタばれでもあるけど