3期・85冊目 『D−ブリッジ・テープ』

D‐ブリッジ・テープ (角川ホラー文庫)

D‐ブリッジ・テープ (角川ホラー文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
近未来、ゴミに溢れた横浜ベイブリッジで少年の死体と一本のカセットテープが発見された。いま、再開発計画に予算を落とそうと、会議室に集まる人々の前でそのテープが再生されようとしていた。耳障りな雑音に続いて、犬に似た息遣いと少年の声。会議室で大人たちの空虚な会話が続くなか、テープには彼の凄絶な告白が…。弱冠23歳の著者が巨大な嘘を告発する新黙示録。第4回日本ホラー小説大賞短編賞受賞作。

かくも過酷な生の告白があっただろうか?まさに生きるとは食べること。
湾岸の広大なゴミ捨て場に捨てられた幼い少年。いきなり片足を失い、他人の助けさえ望めない状況。一緒に捨てられた冷蔵庫の中の食物も無くなると今度は餓死に危険が迫る。そこで少年が生きるために取った行動とは・・・。
少年がテープに吹き込んだ告白を聞くという体をなしているせいもあって、文章の拙さはあるものの、その痛みと絶望は否応無しに伝わってくる。
薄いので3,40分程度で一気に読める。いや一気に読んだ方がいいかもしれない。というのもリアリティを感じさせない部分もある*1ので、途中で間をおくと醒めるかもしれないから。ただ若干23歳の新人にしてこの描写はすさまじいものがある。
野生のヒトと化した少年が、同じように捨てられた少女との出会いで人間らしい知識と感情を取り戻すあたりは、感動的に思う部分と、そのせいで劇薬度が薄まり中途半端になってしまって残念に思う部分と両方あったりする。

*1:少年の生存能力もそうだけど、某レビューによると猫のバラし方とか虫の味がおかしいらしいが確認したいとは思わない