4期・2,3冊目 『人間椅子 江戸川乱歩ベストセレクション1』、『芋虫 江戸川乱歩ベストセレクション2』

内容(「BOOK」データベースより)
貧しい椅子職人は、世にも醜い容貌のせいで、常に孤独だった。惨めな日々の中で思いつめた男は、納品前の大きな肘掛椅子の中に身を潜める。その椅子は、若く美しい夫人の住む立派な屋敷に運び込まれ…。椅子の皮一枚を隔てた、女体の感触に溺れる男の偏執的な愛を描く表題作ほか、乱歩自身が代表作と認める怪奇浪漫文学の作品「押絵と旅する男」など、傑作中の傑作を収録するベストセレクション第1弾。

江戸川乱歩は子供の頃に「怪人二十面相」シリーズから読み始めまして夢中になったものですが、探偵ものだけでなく怪奇ものにも手を出したことが私のホラー好きのルーツかもしれません。少年向けに多少表現を薄くしてあってもおどろおどろしいイメージは充分伝わってきたものです。
その後大人になってからは読む機会は無かったのですが、ホラー作品を集中的に読んでいた昨秋に偶然本屋で見かけたので即購入(そしてしばらく積んだままだったという・・・)。
このベストセレクションは探偵小説に代表されるような理知的小説は少なく、「怪奇幻想・異常心理」に属する作品に限られているのが私好みでした。カバーイラストが良かったのもありますね。


改めて読んでみて、情緒あふれる文章の素晴らしさを堪能。読んだ後には何とも言えない余韻が残る短編多し。そんな中でも特に印象に残ったのがこちら。

人間椅子
何より当の夫人の反応をはじめ、結末がどうなるか気になっていたら、そうくるか!と驚かされる。
「鏡地獄」
創元文庫の日本怪奇小説傑作集にも収録されていた作品。まるで鏡を偏愛した結果、魂を吸い取られるがごとく最後は狂気を発した男。最後に見た情景とはいったい・・・?
鏡ってじっと見ていると何か出そうで怖かったりするものだしねぇ。
押絵と旅する男
決して結ばるはずのない相手*1に恋した男の話。願いが叶う代わりに永遠に囚われてしまうとわかっていたら・・・?

2

「芋虫」
手足とほとんどの感覚を失った傷病軍人と世話をする妻の話。それを何とも淫靡に仕立て上げてる。でも最後はとても悲しく感じた。
「赤い部屋」
決して捕まることのない間接的な殺人に手を染めてきた男が100人目に選んだのは・・・。あのオチは無かった方がいいのか、あれで良かったのかちょっと微妙。
「人でなしの恋」
精巧に作られた人形に恋してしまった男をその妻の視点から描いている。「押絵と旅する男」もそうだけど、フェチズムというか特殊な趣味が高じて悲劇的結末を迎える話がよく見られる。設定を置き換えれば現代でも通じそうな内容だけど、日本には昔からこういった話はよくあったのだろうか?

*1:押し絵の中の少女