3期・17冊目 『探偵ガリレオ』

探偵ガリレオ (文春文庫)

探偵ガリレオ (文春文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
突然、燃え上がった若者の頭、心臓だけ腐った男の死体、池に浮んだデスマスク幽体離脱した少年…警視庁捜査一課の草薙俊平が、説明のつかない難事件にぶつかったとき、必ず訪ねる友人がいる。帝都大理工学部物理学科助教授・湯川学。常識を超えた謎に天才科学者が挑む、連作ミステリーのシリーズ第一作。

殺人事件における不可解な謎を全て科学的に解明する。そんな内容の短編集ですが、主人公の草薙刑事と同じようにまるきりの文系で、物理や化学には苦手意識を持つ私が読んでもさほど悩ましいほどではなく、サクサク読めましたね。それも素人には縁の無い特殊技術を要する機械が多く使われているから、「へー、そうなんだ」と素直に関心できるからかもしれません。もっとも「爆ぜる」の水酸化ナトリウムの話は、『天空の蜂』で原子力発電関係の記述があったのを記憶していたので得心がいきましたけどね。


物語進行としても、草薙刑事と湯川助教授とのやりとりが絶妙で入り込みやすく、万人受けしやすいと言っていいかも。著者得意のイメージしやすい状況描写とキャラクターが活きています。
ただ全体的に事件の動機は短絡的過ぎて、あまり捻りは少ないですね。あくまでも付随する凶器などの謎を解くのがメインで。それでも一番最初の「燃える」が部屋の入れ替りや、少女が見つけた赤い糸の秘密など、短い中にもちょっとした工夫が効いていて好きだなぁ。