11期・14冊目 『Jの神話』

Jの神話 (文春文庫)

Jの神話 (文春文庫)

内容紹介

聖なる女子高に潜む悪魔の正体は!?

全寮制の名門女子高「純和福音女学院」を次々と怪事件が襲う。1年生の由紀は塔から墜死し、生徒会長を務める美少女・真里亜は「胎児なき流産」で失血死をとげる。背後に暗躍する謎の男「ジャック」とは何者か?その正体を追う女探偵「黒猫」と新入生の優子にも魔手が迫る。女に潜む“闇”を妖しく描く衝撃作!

プロローグでは自殺した生徒が書き残した「ジャック」という文字。
クリスチャンとしてはタブーのはずの彼女が自殺を選んだ理由とは?
深夜、密かに部屋を抜け出し、どこかに集う生徒たち。
そして胎児無き出産による大量失血という衝撃の死を遂げた美貌の生徒会長。
その直後に副会長らが密かに会話していた際に漏れた「ジャック」という言葉。
人里離れた郊外にある全寮制の名門女子高「純和福音女学院」に入学したばかりの優子は学院内で次々と起こる事件や謎に恐れおののきます。


一方で昨年に幸せな結婚生活を送っていた長女・由利亜を、そして今回は生徒会長を務めていた次女・麻利亜と立て続けに愛娘を失った会社社長の朝倉は警察や学校からの説明に納得がいかず、やり手の女探偵”黒猫”を雇って調査を依頼します。
黒猫はまず去年、由利亜が夫を殺した後に自身も出産後に死亡したと見られている事件を洗い出します。
臨月の重い体の女性が果たして直接手で男性を絞め殺せるものだろうか?
そして姉妹の二つの事件に共通するのは出産後に失血死を遂げたことと、その胎児が揃って行方不明になっていること。
検死時の医者から聞いた限りでは、出産時に何らかの異常事態があったのではないかということで、かかりつけだった産婦人科医を疑うのですが・・・。


ほぼ外界から遮断された女子高で起きた、クリスチャンの生徒の自殺に学校内での出産死というショッキングな事件、それに何か隠しているような生徒会の様子と何かと謎めいた描写が続く前半部分はそそります。
どこか怪しげな男性教師、唯一ヒロイン(生徒)の味方と思われた若いシスターの豹変といった脇役も適度に良い刺激をもたらせていたと思います。
そしてもう一人のヒロイン探偵によってそれらの謎に迫っていくのですが、そのキャラと途中までの構成自体は結構良かったと思ったんですよね。黒猫シリーズ化してもいいかなって思えるくらい。


それでジャックの正体ですが・・・これは万人受けはしないですね(Jの理由もちょっと脱力しました)。
ある程度ネタばれすれば、染色体異常によって生み出された化け物だと。*1
ある程度の科学知識や(黒猫による推測であるが)歴史的な背景もあって理由づけされてはいるのですが、生物学的には納得はしづらいかな。


amazonで酷評が目立つのは、『イニシエーション・ラブ』で知名度が高まったゆえ、途中まではホラーサスペンス風であったのに最後はエログロと化してしまったことに期待が裏切られた気がしたのかもしれませんね。
個人的にはこういったB級ホラー的な内容は好きですけど。
どうせならもっとジャックを暴れさせても良かったかも。もう完全に内容がエロゲーですな(笑)

*1:冒頭は普通の男性のように書かれているので騙された