11期・15冊目 『ウロボロス・レコード2』

内容(「BOOK」データベースより)

錬金術に没頭し、凄惨な実験を繰り返していたトゥリウス。彼はある日、兄・ライナスによって、領主就任の名目で王都から追い出されてしまう。与えられた領地は痩せ、民は困窮し、統治に当たっていた代官たちは私腹を肥やしている、伯爵家領のお荷物のようなものだった。トゥリウスは、荒れ果てた領地の改革に手を尽くす。彼に付き従うのは、奴隷の少女・ユニ、剣士・ドゥーエ、そして不思議な運命に導かれ、彼の下に加わる新たな仲間たち。追放されたはずの片田舎の土地で、トゥリウスは着々と力を蓄えていく。ただ生き残りたいだけの弟と、その所業を許せない兄。二人の対立は伯爵家の中の問題を飛び越えて、更なる波乱を起こす。

兄・ライナスによって王都から追い出され、はるかな田舎であるヴォルダン州マルラン郡の領主に就任となった主人公トゥリウス。
道中で死にかけていたB級冒険者で”両手剣”の異名を持つドゥーエを拾い、その意思を汲んで回復ついでに洗脳を施して忠実な部下(性格は変わらず)として、早速マルラン郡に乗り込みます。
私服を肥やしていた代官たちを彼流のやり方で一掃。痩せた農地を錬金術で土壌改良したり、重すぎた税を軽くするなど内政改革に取り組みます。
とはいえ、トゥリウスにとって内政は片手間の仕事。
不老不死を実現するための本業の錬金術に邁進、その成果である新たな作品としてはドゥーエが奴隷市場で購入したダークエルフに、元学友のシャールと続けざまに手がけます。
内政自体は専門の官僚に任せるべく、王都で家臣団の公募を行います。
当然、そこには少しでもトゥリウスの瑕疵を見つけようとする兄の思惑だけでなく中央集権派貴族の首魁・ラヴァレ侯爵の手も伸びてきて・・・。


今回は新天地での展開ですが、転生ものでありがちな前世の知識を生かした内政は本当に片手間ですね(笑)
前巻の終わりに新たに配下となったドゥーエだけでなく、魔力に優れたダークエルフを洗脳能力のある魔眼持ちのドライ、もともと優れた死霊術師だったシャールを様々な魔物の肉体を掛け合わせたキメラとしてヴァンパイア・ロードに生まれ変わらせる。
家臣団公募に集まってきた者たちは試験で選抜した上で洗脳を施して忠実な部下にしてしまうなど、だいぶトゥリウスの周辺も賑やかになってきました。
あくまでも本人の能力を活かすために人格は変えておかなかった人物も多いので、その掛け合いも多種多様で面白いです。
中でも武闘派であるドゥーエだけがトゥリウスに毒されてなくて唯一の良識派っぽくなっているのが皮肉ですね。
それからトゥリウスの予想を超えてぶっとんだシャールの言動のせいで、かなりコミカル味が増している気がします(笑)


トゥリウスのやっていることは新天地に来ても相変わらずというかますますエスカレートしているんですが、異世界錬金術ならでは新鮮味が加わっていて、読んでいて飽きなかったです。
本人としても余計な手出しが入らぬよう、密偵も見事に出し抜き、秘密基地は着々と拡大中って感じなのですが、兄どころか更に上をゆく老獪な策士にまで目を付けられて、今後どうなる?といった終わり方がまた心憎いですね。