2期・73冊目 『ターン』

ターン (新潮文庫)

ターン (新潮文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
真希は29歳の版画家。夏の午後、ダンプと衝突する。気がつくと、自宅の座椅子でまどろみから目覚める自分がいた。3時15分。いつも通りの家、いつも通りの外。が、この世界には真希一人のほか誰もいなかった。そしてどんな一日を過ごしても、定刻がくると一日前の座椅子に戻ってしまう。いつかは帰れるの? それともこのまま…だが、150日を過ぎた午後、突然、電話が鳴った。

北村薫という作家さんの作品を初めて読んだのですが、恥ずかしながら白状しますと、本編を読み終え解説に目を通すまでは女性かと思っていました。
内容としては、ターンを繰返す真希の一日区切りの生活が大きく占められていますが、そういう特異な状況に置かれた感情の起伏がよく伝わってきましたし、ゆったりとした文章から受ける印象ありましたので。まぁ男視点なんで女性が読むとどうなのかわかりませんが。*1


日常の気配が感じられるほどに、すぐそこにいそうでありながら誰1人として会うことができない孤独。全てが一日前に戻ってしまう虚しさ。ある意味無人島に残されたロビンソン・クルーソーよりもたちが悪い生活に自分はどれくらい耐えられるだろうか、ということも思いながら読むと主人公の心境がよくわかります。
平凡な毎日の中でも、変わらないように見えて、同じ日など一日たりとて無い。そんな当たり前のことを実感させられるのです。


そしてある意味一風変わったラブストーリーでもあります。キーとなっているのは冒頭から出てくる声。主人公が己の中で対話してみるというわけでもなく、どうも男性っぽい声と会話しているよう。実はこれで最初から作品に引き込まれました。
終りが無いかと思われたターンの繰り返しの中で、突然鳴った電話から話は急展開。
電話から聞こえてきた声と、物心ついた時から聞こえていた自分の中の声との同一性や、二人以外は会話できないという点など、不思議な状況にも興味をそそられましたね。


うん、何だか他の「時と人」3部作も読みたくなってきたぞ〜。*2

*1:「薫」の名の女性作家がいるということも先入観としてあったり

*2:実はもう『スキップ』注文済み