4期・77冊目 『紙魚家崩壊 九つの謎』

紙魚家崩壊 九つの謎 (講談社ノベルス)

紙魚家崩壊 九つの謎 (講談社ノベルス)

内容(「MARC」データベースより)
狂気にとらわれていくOLを描いた「溶けていく」、日常の謎を描く「おにぎり、ぎりぎり」、『メフィスト』連載の「新釈おとぎばなし」など、優美なたくらみにみちた「9つの謎」を収録したミステリ短編集。

雑誌に掲載されていた九つの短編がまとめられたミステリ短編集です。
どれも著者の持ち味である日常生活にひそむ謎がテーマになっているのですが、その筋書きと結末についてはそれぞれ個性あふれる作品と言えるでしょう。


「溶けていく」は、ごく普通のOLの日常を描いていたと思いきや、雑誌に載っていた写真が勤務先の上司にそっくりだったことから始まった遊びが狂気の世界へ誘う。最後まで救いが無かったのでびっくり。
タイトル作と「死と密室」は探偵ものではあるけど、探偵とその助手がなんとも不思議。有名古典ミステリのパロディも兼ねているようなので、ミステリーマニアではないと面白さがわからないみたいです。
「蝶」は男女の会話の中で出てくる蝶に関する女性の回想。いまいち印象に残らなかったです。
「俺の席」は、私としては筒井康隆でお馴染みの不条理モノ。怖いオチですけど、結構こういうの好きだったりします。
「白い朝」は、両親の馴れ初めを聞いたような、こっちが照れくさい気分になり、「おにぎり、ぎりぎり」や「サイコロ、コロコロ」は思わず頬が緩むオチ。
ラストの「新釈おとぎばなし」は、童話「カチカチ山」を探偵かつ保険調査員であるウサギの主人公が推理小説仕立てでおばあさん殺人事件の解き明かす話。
一時期流行った「本当は怖い〜」風でありますが、これが北村薫の手にかかると話上手な授業を聞いているようでとても面白い。やたらと現実的なキャラクター付けをされたタヌキが哀れでもありますな。