2期・38冊目 『天涯の砦』

天涯の砦 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

天涯の砦 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

いやぁ、久しぶりに読み応えのあるSF小説を読ませていただきました。*1
月往還船に軌道ステーションの残骸がくっついたまま漂流するという特殊な状況もさることながら、突然の事故によって、各スペースに分断された(間には真空地帯)ままの生存者達という設定が興味をそそられます。
災害から生き残った人々が力を合わせていくかというと、とんでもない。不安や不信・憎悪が渦巻き、更に加えていわくありげな人物が妨害工作したり。
最後まで、幼い子供までまじえた生存者達がどうなるのか目が離せません。


あくまでも想像ですが、現実の災害でも被害者同士の諍いがあるのでしょうね。日常ならば我慢できることでも、辛く厳しい状況では余裕も無くなりちょっとしたことでトラブルになるのかもしれません。


舞台が舞台だけに真空とか無重力とかが進行上、大きい意味を持つのですが、登場人物を主体に見れば、危機に遭遇した時にどういう意志を持ち行動するかがテーマになっていると感じました。登場人物たちの起伏ある心理描写もよく書かれています。*2


内容の重厚さは文句無いですが、SF用語が頻出するので多少わかりにくい記述もありました。でもそこはあまり気にせず読み進めていけば、ラストの無重力スペースにおけるスリリングな展開が楽しめますよ。

*1:と言っても、この前読んだSFは何だっけ?というくらいお粗末なSF歴なんですが

*2:そういう意味では立派なパニック小説と言ってもいい