11期・44冊目 『破壊の御子2』

破壊の御子 2

破壊の御子 2

内容(「BOOK」データベースより)

異世界に召喚された高校生の木崎蒼馬は、生命の危機を救ってくれた獣人族ゾアンに報いるため、軍略を授け、攻め寄せる人間の軍勢を撃退することに成功した。ゾアンを滅亡から救い、彼らの生存圏を確保するため、長い戦いが始まったのだ。人間たちの前線基地である砦を落とし、ゾアンの各部族を団結させた蒼馬は、続いて高い塀に囲まれた町・ボルニスの攻略を狙うが、それはゾアンだけでない、種族を超えた、人間への反攻作戦の始まりだった…。

人間に滅ぼされる寸前だったゾアンの『牙の部族』の危機を救った蒼馬。
そこに他の部族である『たてがみ』、『目』、そしてガラムと因縁の狂戦士ズーグが率いる『爪』の部族がソーマの元にやってきました。
ゾアンたちの悲願である草原を取り戻すためにはその第一の障害である砦を攻略しなければならない。
ズーグは自らの部族の戦士を従え、今後のゾアンの勢力拡張に参画すべく、人間の兵隊を退けたという蒼馬を見極めに来たのでした。自らの眼鏡に叶わなければ、ズーグ自身が主導権を握ろうとして。
しかし、砦攻略を前にして蒼馬が口にしたのはズーグにとっては驚くべき内容でした。


数ある異世界召喚をテーマにしたWeb小説の中でも特に硬派な異種族戦記物としての特徴が光る本作の第2巻は、かつてゾアンが人間の軍隊に大敗して追われた父祖の地であるソルビアント平原奪回を目指します。
その第一段階は砦攻略。なんと百人に満たない数の戦士しかいない『牙の部族』のみで行うとのこと。
そしてその後は平原に勢力を伸ばすのではなく、街道への出口でもあり、平原に蓋をしている存在であるボルニスの町を一気に攻略せんと企みます。
機動力こそ長所であるゾアンにとっては不得手な攻城戦を前にして、蒼馬は如何にして知恵を絞り戦うのかが今回の見所です。


主人公最強でサクサク進みがちなのが多い異世界ものWeb小説と違い、相変わらず等身大というか貧弱で荒事が苦手な主人公・蒼馬です。
でも主人公の知識で異世界の常識をひっくり返すさまが面白い。
今回は異世界の人間の街に潜入していろいろとカルチャーショックを受けるさまが興味深かったです。
実際、現代人が中世ヨーロッパを訪れることになったら、落胆することの方が多いのでしょうなぁ(笑)
さらにゾアンだけでなく、ファンタジーノベルご用達の種族ドワーフだけでなく、恐竜をモチーフにしたような種族・ディノサウリアンが登場。
すさまじい暴れっぷりを見せてくれました。
当初はゾアンの生存圏確立のための戦いが、他種族の奴隷も巻き込んで今後どこに向かうべきか、そこには地球に存在する他民族移民による巨大国家を範とした宣言へと繋がるあたりもよく考えているなと思いましたね。
後から見れば英雄としか思えないほどの統率ぶりなのですが、本人は現実に圧倒された余りに、悩みに悩んでそこに辿りついたその過程がいいです。
唯一残念なのは、やっぱりパンチの弱いイラストですかね。
狂気を秘めたアウラの表情は良かったですけど、ゾアンがどうもしっくりこないです。