11期・45冊目 『破壊の御子3』

破壊の御子 3

破壊の御子 3

内容(「BOOK」データベースより)

ドワーフやディノサウリアンたち奴隷を解放し、ボルニスの町を手中に収めた木崎蒼馬に、ホルメア国から討伐軍が派遣される。討伐軍の指揮官は、歴戦の将軍ダリウス。討伐軍を迎え撃つべく奇襲を仕掛けた蒼馬だったが、軍略に長けたダリウスに、あっさりと見破られてしまう。訓練された兵士たちを的確に指揮するダリウスと、種族ごとの特性を生かして意表を突いた策を繰り出す蒼馬。二人の知略のぶつかり合い、「ボルニス決戦」の火蓋が切られた―。

前巻にて奴隷蜂起をきっかけにして、首尾よくとまではいかなくても、蒼馬たちは見事ボルニスの町を奪取。その後、無抵抗の人間への攻撃を戒め、住民の行動を束縛しなかったことから町に落ち着きが出てきました。
しかし、町を奪われたことを知ったホルメア王ワリニスは激怒し、歴戦の名将軍ダリウスが討伐軍の指揮官として任命されます。
しかも叛乱軍千数百に対して、勝ちが固い戦に便乗するように初陣の貴族子弟がこぞって参加したために七千ほどに膨れ上がりました。
一方、ゾアンの斥候やいつの間にか軍事顧問のような役になっていたマルクロニスからの情報によって、数千の国軍が迫ってきたことを知った蒼馬はこれにどう対応するか悩みます。
常識でいえば数の少ないこちらは城壁を盾に籠城。
しかしそれでは主力たるゾアンの機動力も強力無比なディノサリアンの白兵戦も活用できない。
負ける要素など何一つない戦いを前にしても、ダリウスだけは敵を単なる勢いだけの反乱軍とは侮らず、完全に警戒していて、初手として放ったゾアンの奇襲を読み、逆に罠にかけようとしていたのでした。
奇襲失敗後、打つ手に困った蒼馬は町の外の地形を見て回って決断を下します。
街道北の丘に急造の陣地を造って野戦にを行うことを。
そして門の上には柴の束を置くだけにして、敵の疑心暗鬼を誘う策としました。


攻め寄せるホルメア軍の数が予想以上に多いことに加えて、それを率いるのが最高の将とも言っていいダリウス将軍。
Web掲載時にも思ったのですが、蒼馬のハードル高すぎ!
そしていざ戦いが始まると、双方の読み合いと共に流動的に戦況が動いて、気が抜けない描写が続きます。
新たな種族として、定番のエルフやハーピュアンも登場しました。


本作の良い点としては説明付き戦況図があるので、どのように戦況が動いたのか戦記慣れしていない人にも理解しやすい点にあります。
文章だけでも戦場の空気がよく伝わってきますけどね。
ほんのちょっとした出来事で戦士たちの意気や戦場の流れが変わる。
最後の最後までどちらが勝利を収めるかわからない緊迫感に包まれた描写に心奪われました。


ふと気になったのが、第3巻の発売が2015年10月で、その後1年近く経ちますが続刊が出ていません。
1〜2巻あたりのamazonのレビューも評価高いのですが、やはり一般受けしない内容なのか?
書籍化作業などにより連載ペースが落ちたこともあって、Web掲載の方に追いついてしまうので、間隔を空けているだけだと思いたいところですが。
ボルニス攻防戦の後は時系列が進んで、街の発展(蒼馬の知識の復元含む)とか後のジェボアとの交流とかあるはずなんで、ぜひ4巻を読んでみたいですね。