11期・40冊目 『アンダー・ザ・ドーム 1』

内容(「BOOK」データベースより)

ある晴れた日、田舎町チェスターズミルは透明の障壁によって外部から遮断された。上方は高空に達し、下方は地下深くまで及び、空気と水とをわずかに通す壁。2000人の町民は、脱出不能、破壊不能、原因不明の“ドーム”に幽閉されてしまった…。スピルバーグのプロダクションでTV化。恐怖の帝王の新たなる代表作。全4巻。

かつて東京が謎の雲によって閉ざされてしまうという小松左京首都消失』を読んだことがありました。
本作は著者がよく描くアメリカ北西部メーン州にある小さな町・チェスターズミル全体が透明な壁によって完全に覆われてしまったというもの。


冒頭でそれが出現した直後、練習飛行中のセスナ機が激突して墜落。
運悪くその場所にいた生き物(人間含む)はことごとく壁にばっさりと切断されて命を落とす。
当然、地上でも道路が遮断されていたことに気づかずに壁に追突して死亡事故が立て続けに起こってしまいます。
付近にいた人々は事故を目撃し、上空では鳥が次々とぶつかっては落ちてゆく様を見て、透明で見えないが、とてつもなく硬い何かがそこに存在することを認識します。
壁はかなりの高度の上空に及び、同時に地下にも存在するらしい。
かろうじて空気や微量の水のみ通すことが確認されただけで、電話や電気といったインフラは遮断されてしまいます。
幸いにも停電がよく起きる地域なので、自家発電機を備え付けている家が多く、燃料となるプロパンガスもそれなりに備蓄されていました。
しかし、この現象がいつまで続くのは誰のもわからず・・・。


壁付近では強力な電磁波が発生しているため、近づいた警察署長(ハワード・パーキンス)のペースメーカーが暴発して命を落としてしまうなどの悲劇。そこから閉ざされた町の内部での歪んでいく人間模様が著者独特の描写によって繰り広げられます。
1巻前半は多くの人物の視点が切り替わるので、人間関係が把握しづらかったですが、セスナの墜落によって妻を亡くして無気力となった第一町政委員(アンディ・サンダーズ)の代わりに第二町政委員(ビッグ・ジム・レニー)*1の男が町の権力を握りつつあるあたりから惹きこまれていきました。
それは町のために住民を救い危機に立ち向かう為政者のではなく、この機会に自らの暗部を隠して、更に権力を強めて独裁者の如く振る舞おうとしているよう。
それに対して、町から出ようとした寸前に壁に阻まれてしまった主人公(デイル・バーバラ)は、そのきっかけとなった喧嘩沙汰の相手の若者(ビッグ・ジムの息子など)たちが新たに臨時警察官として雇用されて、自分を狙っていることに気づきます。
しかし軍にいた頃の上司からミサイルを発射して壁を破壊する試みを聞いてしまい、このままでは大参事になる可能性に気づいて・・・。


何やら良からぬことを企んでいる気配のビッグ・ジム、それに対抗しようとする主人公の戦いの行方。
閉ざされた住民たちはこの先どうなってしまうのか?
突然発生した壁の秘密とは?
壁の外の政府の対応は?
色々と気にかかる問題を抱えたまま2巻へと続きます。

*1:それぞれ町長とその副みたいな立場かな