7期・62冊目 『犯罪者はどこに目をつけているか』

犯罪者はどこに目をつけているか (新潮新書)

犯罪者はどこに目をつけているか (新潮新書)

内容(「BOOK」データベースより)
プロの犯罪者は恐るべき観察力を備えている。彼らに特有の物の見方、考え方、そして行動パターンを知ることが防犯の鉄則なのだ。わが身、わが家、わが町を守るために普段から何を心がけ、どうすればいいのか。「やられるヤツには油断なり死角がある。自分たちはそこを突く」と語る伝統的大泥棒の実践的レッスンをふんだんに盛り込んだ異色の防犯読本。

珍しく実用本を手に取ったのはスゴ本の書評に惹かれたから。
http://dain.cocolog-nifty.com/myblog/2012/10/post-b7d5.html


本書は実際の犯罪者へのアンケートや、その道では名の知れたスーパープロと呼ばれる窃盗犯への聞き取り、街のモデル図などを使ったシミュレーションなどを通じて犯罪を行う側の目線から書かれているのが特徴となっています。
実家にいる時や一人暮らしの時はあまり気にしなかったのですが、自分が家族を持ち、ささやかながら「家」を持つとなると、防犯にも気を使うようになります。
ちょっとの間の外出でも鍵をかけること。夜窓を開けっ放ししないこと、プラス補助鍵*1の活用。貴重品の隠し場所…etc
しかし守る側の意識だけでなく、時には犯罪を行う側の視点に立ってみると新たに注意すべき点が見えてくることもある。「彼を知り己を知れば百戦して殆うからず」とも言いますしね。


例えば、侵入犯による下見について紹介しているのですが、プロの手にかかると短時間さりげなく見て周っただけで30箇所以上の項目によって侵入しやすさをチェックするのだとか。
いわく、庭木を綺麗にしていなかったり、表側はいくら綺麗にしていても家の横や奥に自転車や不用品を雑然と積んであると隙があると見做される。
犬を防犯用に飼っていても餌で手なずけてしまえば問題なく、夜行性で懐きにくいネコの方がかえって厄介。やはり古い家が狙いやすい、樋は手動エレベーター。高い塀はいったん入ってしまえば隣人や通行人からの目を塞ぐことになってしまう、など。
更に境界線の状態によって隣家との関係まで、目から鱗のプロの目のつけどころの数々が紹介されていました。
そして通り魔的な障害犯・性犯罪者はどのような立地で犯行に及びやすいのか。実際の事件を元に紹介されていました。
日中であれば見通しの良い一本道。それでいて脇道などに犯人の逃げ道が確保されやすいところ。
夜間であれば、街灯の切れ間や見通しの悪い曲がり角が危ないのだとか。
逆に言えばそういった点を注意して犯罪者の目につきにくく、犯行を思いとどまらせるような工夫がそのまま自分が被害者になりにくくさせるわけで、まさに防犯の実学と言えます。


本書の中でも具体的に素人ができる簡単なセンサーなどの仕掛けや夜道を歩く際の心構えは説かれていますが、一番重要なのはコミュニティ単位で協力して防犯意識を高めること。
自分(家族)だけ被害に遭わなければいい、防犯は警察に任せばいい。そういった考えでは犯罪は減りません。
犯罪者は通りに放置されているゴミやはがれかけたポスター、見知らぬ人に対する態度などから人々の防犯意識を捉え、犯罪しやすいか(しにくいか)観察しているのだとか。
何より嫌なのが見られることと声をかけられること。そのため、市民が互いに協力しあったり、不審者に注意しよう(声をかけよう)という街づくりを目指すことが重要と締めくくっています。
まずは市民一人一人が防犯の主役という意識を持ち、できることから始めていくのが大切であると言えますね。

*1:もともと小さい子供が勝手に開けて転落するのを防止するため