11期・39冊目 『アラミタマ奇譚』

アラミタマ奇譚

アラミタマ奇譚

内容(「BOOK」データベースより)

羽田発熊本行の旅客機が阿蘇外輪山に墜落した―。それは不思議な事故だった。乗客乗員62名が消失し、ただ一人生還した男は記憶の大半を失っていたのだ。同乗していた恋人を捜すため、収容先の病院を脱け出した男を見知らぬ土地で待っていたのは、世にも奇妙な体験の数々だった。阿蘇を代々護ってきた人たちの存在、いにしえから語り継がれる鬼伝説の謎、そして人外の魔物の跳梁。やがて、強大な敵が牙をむき、未曽有の危機が迫る。火の国熊本の異界で闘う男の運命は!?カジシン・ワールドの魅力全開ファンタジー

婚約者の千穂と共に彼女の故郷である阿蘇に向かって飛行機に乗っていた知彦は気が付いたら病院のベッドに寝ていました。
諸々の記憶を失っていたが、どうやら彼らを乗せた旅客機が阿蘇山の上で事故に遭い、唯一の生存者である知彦以外は行方がわからないらしい。
夢の中で「私を探して」という千穂の声を聞いた知彦は看護師らの制止を振り切り、何かに突き動かされるように病院を出てしまいます。
無我夢中で田舎道を歩いている際に出会ったのが千穂の弟である明利。
誘われるままに千穂の実家に逗留することになるのですが、そこで出会った両親が千穂のことを心配していない様子が不思議でした。
その翌日、実家に集まってくる人々。
彼らは皆、墜落した飛行機に身内が乗っていたことに加えて、阿蘇山一帯の”基”というパワースポットを鎮護する防人の家系なのでした。


阿蘇山に伝わる鬼八と健磐龍命(タケイワタツノミコト、阿蘇大明神)にまつわる伝説、それは地下に溜まった”邪魔”*1が治まりきれずに地上に溢れ出た際にその力をもって封じ込めてきたという。
現実に”基”を守る防人とは別にいざという時に鬼八の化身となるべき影の守り人となる運命であった恋人・千穂。
そして阿蘇の生まれであった知彦自身にも隠された役割があったという。


火の国・熊本の象徴である巨大火山・阿蘇山を舞台にした和風ヒロイックファンタジー
語り継がれた伝説が実際にあった出来事であり、現代に再び蘇った脅威に対して、その役目を負う人物たちが立ち上がる。
まさに王道的な展開ですな。
王道すぎて中盤あたりでもう展開が読めてしまって、飽きがきたのも確かなんですよねぇ。
最後の最後まで力無き主人公に危うい場面が続いたり、人としての自我を失って鬼八となる恋人との葛藤とか読ませる部分は確かにあります。
ただ、素直に化け物退治するだけでなく、もう一捻り欲しかったなぁというのが個人的に思えた部分です。

*1:人々の怨念の塊なようなもの