11期・31冊目 『七日間の身代金』

七日間の身代金 (講談社文庫)

七日間の身代金 (講談社文庫)

内容紹介

プロデビューを目指す若き音楽家カップルの千秋と要之介。ある日、富豪の後添いとなった友人から、弟と先妻の息子が一緒に誘拐されたと相談を受ける。身代金の受け渡しは、どこにも逃げ場のない湘南の小島。にわか探偵と化した2人は犯人を追うが……。誘拐と密室の二重の謎に挑む、傑作青春ミステリー。

とある富豪の跡継ぎの青年と、先代当主の後妻の弟が誘拐されて、犯人から送られてきたビデオテープが流される場面から始まります。
要求された身代金2000万を後妻(須磨子)が一人で持ってこいとの要求がありました。
たまたま相談を受けたシンガーの千秋とコンビを組むピアニスト・要之介。
警察に知らせるべきと意見しますが、須磨子は一人で車に乗って指示された場所に向かってしまいます。
こっそり後を付けた千秋と要之介ですが、一本しか無い道路を渡って島に渡った須磨子は猟銃で撃たれて死んでしまいます。
陰ながら見張っていた警察が調べても、凶器となった銃はおろか、犯人や身代金、そして人質となった男性さえも見つからないのでした。


誘拐事件に密室殺人事件という二大要素、それに主人公コンビの恋模様まで加わった青春ミステリとのことで、それなりに楽しめる内容です。
二人が須磨子を追跡しながら喫茶店に寄るたびに、いちいち公衆電話を探して硬貨を入れて、彼女が出発するので慌てて電話を切るという様が非常に昭和っぽくて時代を感じさせます。
ストーリーのテンポは良くて読みやすいです。
本当に最後の方までわからなかったので、トリック自体はまったく文句がつけようはないのですが、この事件で一番誰が得したかという点で早々に犯人の目星がついてしまうのは仕方ないでしょうか。
不満がある点と言えば、犯人や犠牲者の異常性に比べて、探偵コンビのキャラクターが薄すぎて謎解きが淡々としてしまい、あまり物語としての印象が残らなかった点ですかねぇ。