10期・72冊目 『砂星からの訪問者(フィーリアン)』

砂星からの訪問者 (朝日文庫)

砂星からの訪問者 (朝日文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
戦場カメラマンの石塚旅人が乗り組んだ宇宙調査艦が突如、エイリアンと交戦状態になり、旅人は捕虜になってしまう。実はエイリアンの艦隊も、調査艦隊だったのだ。情報力と戦闘力が直結する戦いが幕を開ける!現代SFの旗手が贈る、未知との遭遇を描く本格巨編!

『臨機巧緻のディープ・ブルー』の続編にあたります。
前回が面白かったのでぜひ続きをと思っていたら期待通り出してくれたのが嬉しいですね。
今回も駆け出しの戦場カメラマン・石塚旅人とカメラに搭載されたAIポーシャのコンビが新たな異星人と接触するのですが、探索した末に接触することになった『ディープ・ブルー』の時と違って今回は人類側の領域に突如謎の艦隊が来襲・交戦することになってしまい、緊迫感高まる出だしです。
襲撃を受けた貨物船に救援に向かった陸戦隊に随伴した旅人ですが、例によって好奇心の赴くまま異星人(フィーリアン)の乗ってきたポッドに乗り込んだはいいものの、重傷を負った乗員(拙い会話で名前はンールーと判明)と共に彼らの巨大宇宙(居住)船まで連れて行かれてしまうのです。
そこで知ったのは、猫型星人フィーリアンは狩猟を好み攻撃性と敏捷性に富むが、恒星間航行を行う技術や生産性、それに統一された組織的行動とは無縁の存在であること。
その結果、彼らを補助している知的生命体の存在が疑われたのでした。


ディープ・ブルー』の時は惑星居住人である水棲人魚タイプのルリタリ族と彼らを管理しようとする攻撃的鳥型種族のバチス族との間で苦労した旅人ですが、今回はさらにややこしい。
前半はやや硬い感じがしましたが、旅人とンールーが逃げ回っていく過程で運良くンールーを補佐していたグワール(”歓喜を伴う奉公の座にある大家令”グワールデン・ベーシュカー)とポーシャが接触・協力を得て、フィーリアンの実態と歴史に迫っていく後半からストーリーにのめりこんでいきました。
気まぐれな使役者フィーリアンと表に出ようとしない彼らとの関係が本作の肝ですな。
猫好きとしては人間並みに大きくなった猫そのものであるフィーリアンの描写が楽しくて、旅人が羨ましいと感じたものです。*1
彼らの母星の歴史を旅人たちが知り得てゆく経緯に関してはさすがに巧いですね。まさに星に歴史有りです。
そういえば、あらすじを読むまで続編だと気づかなかったのですが、「黎明の播種者」を探すという命題がある以上、さらに続くのかもしれません。3作目を出す時はなにかシリーズ名を付けてもらえたら著者のファンとしてはわかりやすいのですけど。

*1:猫だけに気まぐれだけど