3期・90,91冊目 『導きの星(1),(2)』

導きの星〈1〉目覚めの大地 (ハルキ文庫―ヌーヴェルSFシリーズ)

導きの星〈1〉目覚めの大地 (ハルキ文庫―ヌーヴェルSFシリーズ)

導きの星〈2〉争いの地平 (ハルキ文庫―ヌーヴェルSFシリーズ)

導きの星〈2〉争いの地平 (ハルキ文庫―ヌーヴェルSFシリーズ)

内容(「BOOK」データベースより)
銀河に進出して数多くの異星人と邂逅した地球は、文明の遅れた彼らを宇宙航行種族にすべく“外文明支援省”を設立。“外文明観察官”を派遣して、秘密裏に援助を開始した。だが、若き観察官・辻本司と三人の美少女アンドロイドが発見した「スワリス」との意外な接触(と失敗)が、やがて銀河全体を波乱へと巻き込んでいく…。期待の若手SF作家が描く、ハートフル・ファーストコンタクトSF。

遥か未来、宇宙屈指に文明を持つ人類が外宇宙で発見した知性生命体の進化を見守るというスケールの大きなSF長編(全4巻)の前半。
宇宙を舞台とするSFとしては、高度な文明を持っていたであろう異星人が遺した痕跡の謎を追うような設定なら名作が多くありますが、本作はその逆パターンといっていいか。オセアノと名づけた星において、動物と大差ない狩猟採集レベルの異星人を手助けしながらその進化を導いてあげる、ちょっとしたシミュレーションゲーム感覚にも似たストーリーです。


そこで異星人を観察・保護し導くのが主人公の観察官・辻本司と彼をサポートする3人のパーパソイド(目的人格)といういわゆる女性型アンドロイド。これがまた若さゆえに未熟な司とそれぞれの目的のために暴走しがちなパーパソイドたちのやりとりが楽しくあるもやや呆れるような。パーパソイドは知能は優れるが性格が極端。そして司は思うようにいかず上司には叱られることが多い。時に司は役目を忘れて感情に走りがちな気もしないではないですが、そこは何か理由がありそうな気配です。


1巻では青銅器・鉄器の発見を通して農耕時代、そして帆船発明による航海貿易時代へ。2巻では国家間レベルの戦争や封建制の不満から宗教が浸透し、やがて天文学を始めとする科学勃興時代へ。人類の文明進化をなぞっているようで違いもだいぶあり、そこは種族や環境を考慮した進化の特徴があって面白いですね。またオセアノの人々はリスとサルに似た身体のまま発達したために、そこから生まれた独特の言い回しもさりげなく散りばめられていて雰囲気を醸し出してます。*1
観察官たちは2大種族のスワリスとヒキュリジの勢力バランスをなるべく保ちながら、かつ干渉は最低限という原則もあって、徐々に発達段階を踏むようにしなければならない苦心も見物です。章ごとに数十年の時を経ていくのですが、多少進化が早すぎるのはちょっと気になりますね。*2


停滞しつつある人類の行方や商売第一を考える星間企業のエージェントも絡んで、今後オセアノの未来がどうなっていくのか後半がとても楽しみです。

*1:人間で言う手や足を使ったことわざが尻尾とか髭に置き換わっていたり

*2:2巻の最後の章では宗教権力の腐敗の時代、天体観測の結果、天動説が生まれた途端、刺激を受けて即地動説が発見される