9期・20冊目 『臨機巧緻のディープ・ブルー』

内容(「BOOK」データベースより)
カメラマン志望の石塚旅人は、相棒のAI・ポーシャとともに宇宙戦艦に乗り組んだ。太陽系を知り尽くした人類がはるかな星系へ送り出す『知に飢えた艦隊』、ダーウィン艦隊だ。目的地のカラスウリ星系には水に覆われた青い星が発見される。しかし星のそばには未知の宇宙艦隊が待っていた。緊迫の対立の中、タビトは愛機のカメラを抱えて、謎の種族が待つ海へ飛び込んだ。新感覚ファーストコンタクト物語。

地球上を知り尽くした人類が更なる未知の分野を目指して宇宙へ。
太陽系、そして宇宙航行技術の発展によって別の星系の異星人と接触まで果たすようになった未来が舞台となる作品です。


新たに発見されたカラスウリ星系へ派遣された第5艦隊(通称ダーウィン艦隊)は調査によって地表のほとんどを水に覆われた第2惑星(命名ディープ・ブルー)が生命居住可能な環境であることが判明。さらに宇宙艦隊が駐留していることがわかるのですが何だか様子がおかしい。
宇宙艦隊の異星人・バチス族とコンタクトを取るうちに、どうやら他星系から来たバチス族が強制的にディープ・ブルー支配下に入れている様子がわかったのです。
どうやら地球人類の艦隊を追い払いたい居丈高なバチス族よりも、惑星住民(ルリタリ族)との接触を図るために半ば強引に先遣隊を出します。
その中には新米カメラマンの石塚旅人がいました。
不時着したキャンプ周辺だけでは飽き足らず、その先に見える高い石塔にいたく興味を抱いた旅人はこっそり単独行動で潜入を図ります。
塔の中には軟禁された”聞き耳”の異名を持つルリタリ族の娘・ヨルヒアがおり、ひょんな形でファースト・コンタクトを果たした石塚旅人(とカメラに内蔵されたAI・ポーシャ)がディープ・ブルーにおける人類と異星人の関係をおおいに引っ掻き回すことになってゆくのです。


宇宙に進出した人類と異星人との遭遇ものは数あれど、いきなり三者の関係というのは珍しいのではないでしょうか?
知ることを至上の目的とする地球人類。
「黎明の播種者」*1を越えることを目的とする攻撃的鳥型種族のバチス族
かつての内紛の影響で知ることを極端に恐れる水棲で人魚に近いルリタリ族
最初はわかりづらかった異星人の事情が石塚旅人&ポーシャの活躍(?)によって明かされ、その関係さえも変わってゆく様が非常に面白いです。
そこには旅人とAIとしての女性人格を持つポーシャとの軽妙なやりとりに、ルリタリ族のヨルヒアとの一風変わったロマンスが彩ります。
遂に戦端を開いたダーウィン艦隊とバチス族艦隊ですが、その戦局は二転三転した上に最後は意表を衝く結末が待っています。
これだから宇宙ものはやめられない。
是非これはシリーズものにしてもらって、旅人&ポーシャとダーウィン艦隊の面々に再会したいものですね。

*1:複数の銀河系に生命を種を播いた先進文明の存在