11期・28冊目 『天冥の標9 PART1──ヒトであるヒトとないヒトと』

内容(「BOOK」データベースより)

カドム、イサリらは、ラゴスの記憶を取り戻すべく、セレスの地表に横たわるというシェパード号をめざしていた。それは、メニー・メニー・シープ世界成立の歴史をたどる旅でもあった。しかし、かつてのセレス・シティの廃墟に到達した彼らを、倫理兵器たる人型機械の群れが襲う。いっぽう、新民主政府大統領のエランカは、スキットルら“恋人たち”の協力も得て、“救世群”への反転攻勢に転ずるが―シリーズ第9巻前篇。

前巻・ジャイアント・アークPART2を読んでから約8カ月も経っていました。
メニー・メニー・シープ世界を脱して、セレスの地表を目指すカドム、イサリらの一行。
次々と襲いくる倫理兵器の人型機械の群れによって、ユレインの付き人女性が殺されたり、イサリが負傷したりするなど苦難を乗り越え、ラゴスの記憶を取り戻すべく、シェパード号を探す旅路は続く。
フェロシアン《咀嚼者》との戦いで捕虜となったゲルトールトは自身が囚われている場所が、かつて“恋人たち”(ラバーズ)が本拠地として使っていた宇宙船であることを知る。
そこで反乱を企てるも、女帝として君臨するミヒルに直々に抑えつけられる。
その時、偶然にも別の者が破壊工作の末にフェロシアンの支配地から逃れるが、それはかつてメニー・メニー・シープの地下世界から落下したアクリラであった。
奇跡的にアクリラとカドムは出会い、互いの無事を喜ぶ。
同時に彼らは旅路の最終的な選択を迫られるのでした。


メニー・メニー・シープ世界における、領主(レクター)への叛乱から始まって、地下よりフェロシアン《咀嚼者》の大群が出でて人間たちを襲い始めた日(大閉日と称される)から怒涛の展開が続いています。
前巻から引き続き外の世界(惑星セレス)の現状が明かされただけでなく、セレスがどこに向かっているか、覚醒したカルミアンの女王や”救世群”=フェロシアン《咀嚼者》との大戦争後の人間たちの思惑など、これだけ長い物語なのに未だに驚きの連続で本当に飽きさせません。
今回はサブタイトル通りに作品世界を構成する様々なヒト(異星人含む)のあり方や関わり方も掘り下げられていて、結構重い部分もあって読み応えありましたね。
特に1巻から登場しているカドムとアクリラとイサリの出会いとそれぞれの心情の吐露、もしかしたら最後となるかもしれない別れの場面はぐっと胸にくるものがありました。

やっぱり気になるのが、最後の方で100億単位の重量トンを配備した太陽系艦隊を凌駕するほどのスケールの大きい戦いが繰り広げられている画面。
やっぱりダダー(ノルルスカイン)の因縁の相手であるオムニフロラ絡みでしょうかね?