9期・42冊目 『スカーレット・スターの耀奈』

スカーレット・スターの耀奈(ヨーナ) (新潮文庫)

スカーレット・スターの耀奈(ヨーナ) (新潮文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
地球を離れ四百時間、惑星「ズヴゥフル5」の大学で出会った少女「耀奈」。その胸には真紅のネックレスが輝いていた…。付き合い始めた地球人の“ぼく”の周りで起きる異変、耀奈と別れなければ不幸を背負うという謎の警告。そして、彼女の身体に秘められた、母国を救うためのある使命とは―。少女との切ない邂逅を描いた表題作他、異空間を舞台にした「泣ける」ファンタジー四編。

どれも特殊な状況での男女の恋愛の結実を描いたSFファンタジーの中編になります。
収録されているのは4編で、それぞれタイトルが舞台とヒロインを示しているわけです。


「スカーレットスターの耀奈」
数多くの宇宙人が交流する惑星「ズヴゥフル5」に留学に来た地球人の“ぼく”。
そこで地球人によく似た異星人のヨーナに出会い、たちまち恋に落ちた。
しかし彼女の故郷の星は寿命が尽きかかっていて、そのために選民であるヨーナにはとんでもない使命が課されていた。


「ドリーム・スターの亜眠」
新たに見つかった植民候補の惑星の調査に来た主人公たちのチーム。
そこは緑に覆われた豊富な自然と長らく放置された施設、そして「まどろみ猿」と命名された奇妙な猿たちがいた。
そして主人公はその星に住民たちが暮らしている頃の夢を見て、とある街角で少女・アミンに出会う。


「ホーンテッド・スターの玲乃」
恋人が死んでしまった悲しみを多忙な仕事で紛らわしていた主人公であったが、ゴーストが現れるという惑星に調査に訪れた際に、亡き恋人・玲乃と再会する。
そこでは見る人の心を投射して実体化させている現象が起こっているのだという。


「キュービック・スターの麻綾」
熱烈な恋に落ちた主人公と麻綾は大学卒業後に結婚を約束する。
しかしその最大の障害は宇宙開発まで手掛ける巨大コンチェルン総帥である麻綾の父。
父親が出した結婚承諾の条件はある惑星で二人が一年間過ごすこと。
何の脅威もない温暖で過ごしやすい惑星環境に拍子抜けした二人であったが、意外な異変が起こる。


恋に落ちた男女が困難を乗り越えて結ばれる。
ストーリーとしてはありふれていますが、相手が特殊な事情を抱えた異星人であったり(「スカーレットスターの耀奈」、「ドリーム・スターの亜眠」)、同じ人間同士ではあってもヒロインが既に亡くなっていたり(「ホーンテッド・スターの玲乃」)、特別な物質のせいで気持ちが冷めてしまう環境に置かれたり(「キュービック・スターの麻綾」)と設定としてはよく考えたなぁと思いましたね。
著者の作品の特徴として、非日常的な状況であっても深く考えずに読みやすいのですが、その分展開が軽いというか、感情移入できるほどではなかったですね。
内容の質としては最後の「キュービック・スターの麻綾」が一番良かった気がします。