5期・47,48冊目 『野望円舞曲4,5』

なんか野望というより陰謀円舞曲といった方がいいぐらい腹黒い人たちが次から次へと現れますな。でもまぁ派手な戦闘シーンは控えめではあっても、政治・経済の運用についての言及が多めなのがより現実感を感じさせているかもしれません。

4巻

内容(「BOOK」データベースより)
たびかさなる争乱に乗じ、莫大な資金を手にしたエレオノーラ。祖国オルヴィエートを出立した彼女の目的は、兄ジェラルドとの再会であった。しかし乗り込んだ客船は、周到に張りめぐらされた罠により惑星改造が済んだばかりの辺境の星へと連れて行かれてしまった。それはエレオノーラとベアトリーチェにとって、新たな試練の幕開けに過ぎなかった…。一方、親善大使としてボスポラス帝国に駐在中のジェラルドは、突如あらわれた失踪していたはずの次兄カルロの口から、帝国の驚くべき提案を伝えられる。大好評スペースオペラ、書き下ろし第4弾。

それなりに面白く読ませる力はあるんだけど、ストーリーとしてはややモヤモヤが残る巻でした。
というのはヒロインらが敵に振り回されるままに終始し、「偶然」居合わせた例のコンビの力によって窮地を脱するというパターン。知謀担当のエレオノーラに対してコンラットとナギブのコンビが荒仕事を担当するという役割なんでしょうけど、そろそろ飽きがきますよ。個人的にはベアトリーチェの活躍がもう少し欲しいところ。


一方、ジェラルドの方は大使として赴任したポスポラスで楽しんでいたところに頭が上がらない老婦人(イレーネ・トラッパーニ)に出会ったり、行方不明だった次兄が訪れたり、果ては客員提督としてムスタファ・ケペル艦隊の下で戦場に向かった早々に戦闘に巻き込まれるなどなにかと大変なことに。それでもマイペースで冷静なジェラルドがいいですね。
こちらは久々に大きな艦隊戦が見られるかと思いきや、水面下で巨大な陰謀が進行しつつあり、図らずもファルネーゼ家の人々が深く関与していくことを匂わせて次巻に続きます。

5巻

内容(「BOOK」データベースより)
商業国家オルヴィエートの国家元首の娘エレオノーラ。彼女は、さまざまな妨害に遭いながらも、兄ジェラルドとの再会をはたすべく、ボスポラスに着いた。しかしその頃、彼は客員提督として、ボスポラス軍の総旗艦に乗り込み、“ローレンシア条約機構”軍との戦いにのぞむべく、エレファンティナ星域へ向かっていた。その場所は、正体不明の謎の女アドリアナ・セルベッジアにより教えられた恐るべき陰謀―宙峡の崩壊が進行中であった。書き下ろし人気スペースオペラ・シリーズ第5弾。

4巻が静とすれば、5巻は動と言えるスピーディな展開。「宙峡」崩壊の危機をメインに愛憎と謀略がめいっぱい繰り広げられ、今までで一番読み応えあったかも。
ただ、エレファンティナ星域を巡るローレンシア条約機構軍とポスポラス軍による大軍同士の決戦というお膳立てがあった割には個々の駆け引きがメインになってしまいあやふやなままで終わったしまいましたが。


そして、ある意味深窓のお嬢様の仮面を脱ぎ捨てたかのように見えるエレオノーラですが、オルヴィエート元首令嬢の立場がそれを許さない。例えば執拗に付け狙う「毒蛇」ことラ・ガーラ*1やルチオ・インザーキの存在がそうなのですが、今回で彼らとの決着がついたように見えますがどうでしょう?
まぁ、なんと言っても紆余曲折の末にコンラットとの仲に進展あったのが一番の見どころかな。代わりに別の不安要素が出てきたようですが。*2
ジェラルドの方は相変わらずでポスポラスの女提督とできちゃったと思えば、遊撃艦隊の指揮を任されて戦場においても手腕を発揮する。それでいて本人はあくまでもマイペース(その分副官が苦労する)。しかし好むと好まざるに関わらず周囲はきな臭くなっているので今後が気になります。女たらしなヤン・ウェンリーな印象あるんですが、最後まで生きていられるでしょうか?

*1:無能者カルロと違い、ラ・ガーラの行動は謎めいていて面白い

*2:だからといって余ったあの二人が安易にくっつくということはないか