10期・31冊目 『南海蒼空戦記3 マリアナ奪回指令』

南海蒼空戦記3 - マリアナ奪回指令 (C・NOVELS)

南海蒼空戦記3 - マリアナ奪回指令 (C・NOVELS)

内容(「BOOK」データベースより)
ルソン島海戦では日本軍の勝利に終わるも、一層激化するマリアナ硫黄島間の日米攻防戦。欧州では独工業地帯を空爆するB17の前に、絶大な速度と火力を誇るジェット戦闘機Me262が大挙出現し、戦線が膠着状態に。欧州戦線に増援を目論む米軍の間隙をつくべく、連合艦隊マリアナ諸島へ出撃を決定、新型艦戦「烈風」を投入する。対する米軍は暗号解読で侵攻を事前に察知し、F6F及び新鋭空母エセックス級、インデペンデンス級で迎え撃つ。B29の実戦配備まで限られた時間の中、日本軍はマリアナを奪還できるのか?

開戦後の蹉跌により追い詰められていた日本ですが、2巻での勝利の結果、フィリピンの米軍を追い詰めて東シナ海制海権を握り、南方からの物資輸送ルートを確保することに成功しました。
もう一方のマリアナ戦線では硫黄島を始めとする小笠原諸島に防衛線を構築、サイパンテニアンを拠点としてB17を繰り出す米軍との激しい航空戦を繰り広げられていました。
時は1948年後半、アメリカでは新型重爆B29の開発が進み、1年以内に運用されるであろうとの見通しから、本土空襲およびその結果生じるであろう国力低下による敗戦への道を避けるためにもマリアナの早期奪回が日本軍にとっての重要課題でした。


そんな時にドイツの工業地帯を空襲せんとしたイギリスから出撃した米軍爆撃隊に対して絶大な速度と火力を誇るジェット戦闘機Me262が迎撃。レシプロ戦闘機とは全く異なる速度性能もあって重大な損害を被ります。
二正面作戦を遂行する国力を誇るアメリカであっても戦力は無尽蔵ではなく、欧州戦線での航空戦力強化のため、太平洋方面は消極的姿勢を取らざるを得なくなります。
そこに付け入り、マリアナ奪回を目指すべく攻勢をかけた日本軍と米軍との間に新たな海戦が生起するというのが今回のメインですね。


膠着状態が続くかと思われた戦況が、欧州戦線の影響を受けて動く。
横山信義著作を読んでいる身としては特に目新しい展開ではないです。
まぁ今回の目玉としては(ドイツからの技術者集団が属する)航空中研主導による新たな航空機が続出したことでしょうか。
既存の局地戦闘機・飛電*1の高高度型はB17の迎撃に活躍。
F6Fヘルキャットに苦戦したことよる零戦の後継機として烈風登場、および彗星・天山も合わせて機動部隊の主力が一新。
また夜間爆撃の迎撃を主任務とする月光の後継機として、日本版He 219ウーフーという贅沢な機体が登場するのは本作ならではでしょう。
やはり電信電波を含めた航空関連技術が上積みされているのは大きいかな。
しかし、いくら日本軍が戦術的勝利を重ねても、圧倒的な物量という脅威を持つチート国家アメリカとの戦いは次第に困難になってゆくわけで。*2
例によって有利な講和を結ぶのが最終目標としても、マリアナ奪回ともう一回くらいヤマ場を書いていくのでしょうね。

*1:日本版Fw190

*2:当然、日本軍も消耗が増えてゆくし