7期・70冊目 『天下の旗に叛いて―結城氏朝・持朝』

内容(「BOOK」データベースより)
室町幕府に抗して滅ぼされた4代目鎌倉公方足利持氏の遺児たちは幕府軍に追われる流浪の身となっていた。下総国の豪族結城氏朝、持朝父子は義によってこのかつての主君の子を擁し、天下に叛旗を翻す。押し寄せる十万余の大軍を相手に、わずか一万の軍勢は果敢に戦い続けた。室町時代中期、関東を揺るがせた大いなる叛乱。戦場に展開するさまざまな人間模様を描く歴史長編。

前提として、室町幕府では初代尊氏の四男・基氏が下向して以来、関東以東を治める鎌倉公方となり、上杉氏が関東管領として補佐役としていました。
時は室町幕府第六代足利義教の代。
第4代鎌倉公方持氏は京都の幕府と対立。幕府方となった関東管領と争うも敗れて自害させられ、一旦断絶の憂き目に(永享の乱)。
幕府の追及から避け、日光にある寺に匿われた遺児たちが、義と力を持つ豪族を頼るべく、結城の名が出てきたところから物語は始まります。


敗れたとはいえ、関東には鎌倉公方に忠義を抱く豪族は多く、下総を本拠とする結城氏はその筆頭。
ただし、鎌倉公方の遺児を保護することは幕府に逆らうのと同じ意味を持つわけで、一族での評定では紛糾して反対意見も出たものの、結局は棟梁・氏朝の決議によって遺児を擁することに決まり、結城氏を中心とした関東東部の豪族と、これを鎮圧すべく軍を派遣した幕府方との1年に及ぶ合戦が描かれていきます。


主人公である氏朝の嫡子・持朝は有能な武将であり、当初は結城氏の将来を考えて遺児の保護に反対しますが、一旦決まった後は戦にかつべく奮闘します。
ちょうど戦の前に子が生まれたばかりであり、我が子に継がせる家を安泰に保ちたい気持ちと武士として戦いを前にして逸る感情で揺れるさまがよく伝わってきました。
圧倒的な戦力差(12万対1万)ながら結城城に籠る関東武者たちは、たとえ勝ち目が薄くとも義によって起ち戦うという武士としての意地を見せつけます。
正直あまり知識が無い時代の戦いゆえに新鮮な気持ちで最後まで読めました。
ただ全体の描写としては結城氏側に偏っていたので、攻める幕府側の状況がもっとあっても良かったとは思います。
実際にあったであろう攻め方の調略に風魔小太郎*1が出てくるとは思いもよりませんでしたけどね。
wikipedia:結城合戦

*1:北条氏に仕える忍者として有名だけど、相模の忍者集団の頭目としての通称なので、この時代にそういった存在がいてもおかしくはないらしい