6期・56冊目 『野望円舞曲 10』

野望円舞曲 10 (徳間デュアル文庫)

野望円舞曲 10 (徳間デュアル文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
ボスポラス帝国の大艦隊が、ついにオルヴィエート本星を攻撃した。しかも、ラムセス星域を消滅させた“思考体”の一派も、活動を始めていた。だが、オルヴィエートの独立をあきらめるわけにはいかない。わずかな艦隊を率いて大宰相ケマル・エヴヂミクに挑むジェラルド。そしてエレオノーラは“嘆きの宙峡”と“金融市場”を武器とした、危険な一手に勝機を賭けた。銀河の命運を決する最後の戦いの結末は…。シリーズ開始から十年を経て辿りついた、あまりにも感動的なラストシーン。巨篇完結。

いよいよ銀河の半分を手中にせんとするポスポラス帝国(ケマル・エヴヂミク)とあくまでも独立の道に縋るオリヴィエート(エレオノーラ&ジェラルド)の最終決戦です。裏ではそれぞれ二つに分かれた思考体同士の激しい戦いがつづけられている模様。
といっても、船団の思考体がオリヴィエートの防衛として一致協力しているのに対して、ポスポラス側の思考体は別の思惑があって利害関係で協力しているに過ぎないことがわかります。
急きょ参戦したローンセストン軍のオブライエン提督とジェラルドによる大軍相手の撹乱戦。それと並行してケマル・エヴヂミク、エレオノーラ、ゴトフリート・アンブロージオ率いる思考体とその三者三様の目指す未来のための駆け引きが描かれていきます。
その経過については省きますが、やっぱりジェラルド戦巧者、バシュトゥルクとムスタファ・ケペルは最後まで魅せた、そしてアンブロージオ卑怯者、ですね(笑)




【以降ネタばれ有り】
しかし驚いたのが銀英伝田中芳樹もかくやの大量虐殺ぶりですね。銀英伝より少ない人物で回していってるのに終盤で次から次へと死なせちゃうんですよ。
特にジェラルドの戦死シーンがあっさりだったのが気になったのですが、ちゃんと最後に子を遺していたということでまぁ納得です。なんだかんだで欲の無い爽やか好男子ジェラルドと健気な侍女ベアトリーチェは最高のカップリングではありましたね。
9歳になるその男子は早くも父親と同じ資質が見られて、母であるジェラルドは喜ぶ半面困っているらしい(笑)
一方、嘆きの宙峡に落ちた面々はやや中途半端な形で幕引きされたのが残念。愛する者の手の中で絶命したと思われるエレオノーラはともかく、こういう物語ではケマル・エヴヂミクこそ壮絶な死を与えるべきでは?


シリーズ全般としては非力なお嬢様がその才知をもって野望を遂げていくくだりはとても楽しめました。
その最大の武器でもある経済を主なテーマとして書いてきただけに、人の心をどう扱うかが最後の焦点となっていくわけですが、終盤としてのこの内容は能書きばかりで無理やり終息させた感がありましたね。あまり感動はなくて、ようやく終わったなといった印象でした。
どうしても実態と仮想空間が交差してわかりにくい箇所もあり、スペースオペラで描くには難しいテーマなのかもしれないです。