5期・37,38冊目 『野望円舞曲 2,3』

1巻は自分としても銀英伝と比較してしまったのもあって評価高くなかったのですけど、2巻目以降は世界観に馴染んできたというか、このシリーズの楽しみどころが徐々に出てきた感じです。人物描写に関しても次第に生き生きとしてきましたね。
様々な人物がエレオノーラを巡り、それぞれの思惑で動くようになってこれから内容的にスケールが大きくなっていきそうな気配です。

2巻

内容(「BOOK」データベースより)
ボスポラスの侵攻を退け、平和を取り戻したオルヴィエートでは、マリオーネ家とファルネーゼ家の政略結婚がおしすすめられていた。国家元首である父の命令に従うエレオノーラ。しかし式の当日、彼女が乗るはずだった宇宙船は閃光とともに砕け散った―名目上の夫をのせたままに。そして、再び波瀾の幕が開いた。夫殺しを疑われるエレオノーラ。老朽艦ばかりの艦隊の司令官となったジェラルド。宙峡を巡っての権力闘争は激化する。裏で糸をひく人物とは…?好評を博したスペースオペラ、シリーズ第2弾。

結婚式直後のハネムーンに向かう宇宙船が爆破されて早々に未亡人になり、莫大な遺産が転がり込んだきたはいいが、世間からは犯人扱いというなんか酷い扱いのヒロインなんですが、大人しく自宅謹慎したままなのがモヤモヤ。
しかし爆破事件絡みで忠実なる侍女にして親友のベアトリーチェが誘拐されたと聞くと、ジェラルド兄様と二人して変装し襲撃に向かうとはなかなかこのお嬢様もお転婆だ(笑)
ストーリーとしてはオルヴィエートの友好国であるアスンシオンにおいて巻き起こった動乱にまつわる話となっています。
いわゆる派手な宇宙戦争もののドンパチばかりではなく、国家の運営上欠かせない経済についても深く言及ているのがいいですね。また、派遣艦隊の指揮官としてアスンシオン到着早々のピンチを凌いだジェラルドが軍才だけでなく経済についても博識であることがわかって評価急上昇。もっとも裏ではエレオノーラ自身もある意味悪辣なことをやらかしているんですが。交易都市であるオルヴィエートにおいて力を握るためには何が必要かということを示唆しているわけですね。

3巻

内容(「BOOK」データベースより)
ボスポラス帝国とオルヴィエートの休戦交渉をくつがえした謎の砲撃―巻き起こった動乱を契機に、エレオノーラは巨大な富を掌中にした。彼女の心に秘められていた父レオポルトへの叛意が、ついに具体的な反抗となって実を結びはじめたのだ。しかしその波紋は、エレオノーラが予想もしなかった形で、商業国家オルヴィエート自体を蝕むことになった。突然の経済恐慌と疲弊した人心、そして民衆たちによる暴動―破壊されゆく街の中で、エレオノーラはなにを思うのか!?大人気スペースオペラ

アスンシオンの動乱が引き金で経済恐慌に陥ってしまったオルヴィエート。そこである陰謀が進行しつつあった。一方、一波乱あった後に講和なったボスポラス帝国へは、大使としてジェラルドが派遣されることに。
今回の一番の見所は、暴動を機に表面化した暴虐なる長兄・フィリッポとの対決ではあるのですが、このあたりは過去からの因縁にベアトリーチェの家族が絡んで一気に山場と化した感ですね。


2巻もそうだけど、エレオノーラの策謀の影には他国の工作員ながらなぜか協力させられてしまうコンラットとナギブの活躍を抜きには語れません。立場が全然違うことが逆に本音で言い合っている印象もあり、意外とこの関係はエレオノーラの内心を知るにはいいかもしれません。
今回も不可解な動きを見せてはエレオノーラを付け狙うラ・ガーラに、工作員グロリア・ラングレット、テロ首謀者・ルチオと新たな人物が出てきてどんどん物騒になっていってますねぇ。まぁエレオノーラ自身が撒いた種もあるし、治世よりも乱世の方が彼女やジェラルドにとって活躍できる場が増えるとも言えましょうが。
そういえば、アスンシオンにおける地下組織の首謀者として2巻に出てきたアドリアナ・セルベッジアの正体やらエレオノーラの母の死など、展開が急激なわりには謎ばかり増えていくので、今後どのように明かしていくのか気になるところです。