6期・38冊目 『碧海の玉座7 グアム攻防』

碧海の玉座7 (C・NOVELS)

碧海の玉座7 (C・NOVELS)

内容紹介
米機動部隊がマリアナを急襲、日本領グアムを制圧した。英国に共闘要請を拒否された日本軍は、単独グアムを奪回すべく決死の「陣号作戦」を発動! 戦艦「加賀」がモンタナ級に挑むが......!?

東南アジア含む太平洋を巡る日英米の3カ国の覇権争いがいつのまにか日英VS米の構図で固定されてしまった当シリーズ。中盤以降はオーストラリア独立を巡る南太平洋の攻防は英軍が主で日本軍が従というパターンで今まで展開されてきました。
それが日本に近いマリアナ諸島に米軍機動部隊が来襲し、グアムを占領(アメリカ視点では奪回)したことから微妙に変わります。
日英とも主戦力がフィジーサモアに釘付けであったこと。蒙った損害から早期の戦力復帰が難しいことから早急な対応は不可能。
それに対してアメリカ軍は密かにエニトゥク環礁を基地化していてグアムのバックアップも万全。更に日本本土を直接爆撃できる超重爆B29の情報が入ってきて・・・。
奇手に思えたグアム占領は、充分戦略として練られた上での作戦であったことが明かされます。
まぁ弱い方を先に片付けようというわけですな。


来襲した米軍はエセックス級を揃えて約600機の艦載機数を誇り、滑走路をほぼ無傷で手に入れたグアムの基地化が進む。
それに対して日本側の手持ちで使えるのは搭載機数の少ない空母のみ。サイパンテニアンの航空基地はグアム占領時の空襲で損害を受けているので制空権を奪うのもままならない。
せめてサイパンテニアンへの増援と多数残る民間人引き上げを企図して日本の首脳部はイギリスに助力を願いますが準備不足を理由に断られます。
そのため、日本側では今までこんなに協力したのに!と怒る声があがります。果ては反英親米派(松岡元外相ら)による同盟解消の声まで出る始末。
そこは日英分断の意図も狙った米軍の策にまんまとはまり、なにやら必要以上に日本の動揺とアメリカの狡知ぶりが目立つ描写ですよね。


結局、日本軍は単独で強行。それも空母部隊(飛龍・蒼龍・飛鷹・隼鷹ほか軽空母)は戦闘機のみで固め、戦艦(加賀・長門陸奥)始めとする水上部隊をグアムに突っ込ませる。その間、輸送船を送って増援と民間人引き上げを行う。
まさに著者らしい作戦です。それゆえか、戦闘描写には力入っていて思わず引き込ませるものがありました。
結果からすれば待ち構えていたモンタナ級によってグアム基地撃破はならぬも本来の目標は完遂。ただしそれは戦艦加賀の犠牲を伴うものでした。
大戦中もっとも活躍した加賀を失うのは大きな痛手ですが、米軍に傾くかと思われたマリアナ諸島の争いで何とか日本軍が持ちこたえたというのが今後どう影響するかですね。
最後に英軍がグアムへの攻撃を約束したことと、サイパンの防空強化の一つとして飛燕*1が登場したことでまだまだこのシリーズもひとやまふたやまありそう。

*1:エンジンをスーパーマリンに換装しただけであんなに早くなるのか