5期・14冊目 『擾乱の海3 ドゥリットル強襲』

擾乱の海〈3〉ドゥリットル強襲 (歴史群像新書)

擾乱の海〈3〉ドゥリットル強襲 (歴史群像新書)

内容(「BOOK」データベースより)
房総沖に集結する米艦隊!米軍の本格的反攻作戦開始、暁の帝都にB25編隊が迫る!電波通信不能の世界で日本は国難を回避できるか?横山信義、待望の新シリーズ第3弾。

同時に『碧海の玉座』シリーズが進んでいるせいもあってか、(横山信義氏にしては)2巻からだいぶ間が空きました。『碧海の玉座』が今までの仮想戦記路線を堅実に踏襲しているのに対し、本シリーズはまったく発想が違うSF風味が入っているために史実に即していながら先が読めず、新鮮味に優れるところがありますね。


無線が一切使えず通信手段が前近代的な手法に限られてしまうために*1、東南アジアの資源地帯確保は別として、早々に中部太平洋方面への攻勢は取りやめて長期持久体制(といっても相変わらず補給線維持軽視でザルなわけですが)に転換する日本。一方アメリカは国内世論の不満を逸らすために何か派手な戦果をあげる必要があった・・・。
そこで史実にもあったように、B25を空母に乗せてのドゥリットル隊奇襲が出てくるわけですよ。
索敵・連絡に苦労しているのはどちらも同じですが、米軍の方が考え方が柔軟で、日本軍の方が古い思考に囚われているのはいかにもという感じです。ただ「戦艦アラバマ」をあんな船にしてしまうのは、絶対著者の好み入っているだろって気がしますが。
まぁこの異変に応じるために今までの常識を覆し、新たなアイデアが編み出されていくのは面白くはあります。
さすがの日本軍もただならぬ状況ゆえに、今後は現場の意見や戦訓が生かされていきそうな気配。良い意味での珍兵器をもっと出していってほしいなぁ。


で、ドゥリットル隊奇襲に先立ち、ちょっとだけ世界情勢が触れられました。
大雑把に言えば、世界規模での国家間の連携が立ち行かなくなってる。特に連合国側がバラバラになっていくのが戦略的に影響が出てきてるようです。その点でもともと不利だった日・独としては当面の敵に集中することになるので、世界大戦としての様相が変わってきそう。*2
今まで海戦メインでしたが、そろそろ陸戦の様子も見てみたいものですね。

*1:夜間は復活することにアメリカは気づいているけど、日本は気づいているふしが無いのはなぜだろう。普通に気づきそうなものだが

*2:すでに独ソ戦第一次世界大戦西部戦線さながらの膠着状態に陥っていることが判明している