10期・6冊目 『南海蒼空戦記2 ルソン攻囲戦』

内容(「BOOK」データベースより)
米軍の奇襲により開戦した日米両国。米軍はB17を中心にマリアナ硫黄島、台湾へ重爆攻撃を拡大した。苦境に陥った連合艦隊は、マリアナ陥落寸前の急報の中、攻撃の根本を断つべく、あえてフィリピンの補給線寸断作戦を断行。ドイツの技術を応用した防空戦闘機で戦線を支えると共に、第一、第二両航空艦隊をルソン島近海に出撃させた。一方、米太平洋艦隊司令部はフィリピンを死守すべく、F4FおよびF6Fで構成された主力の機動部隊で迎撃せんとする。史上初、機動部隊対決を制するのは!?

開戦劈頭の奇襲の影響もあって本シリーズ最初から米軍優勢に進み、継続された空襲や砲撃のためにマリアナの日本軍基地は壊滅。2巻冒頭では早速米軍の上陸部隊が押し寄せてきました。
フィリピン(ルソン島)からの空襲を受ける台湾では北方の基地に退避しながらかろうじて迎撃を行っている様子。
機動部隊は温存策を取ったものの、南方航路が封鎖されて燃料が輸送されないために戦争の見通しとしては早くも暗雲が立ち込めている状態ですね。
GF(連合艦隊)としてはマリアナ奪還よりも、ルソン島の米軍撃滅を最優先とするようですが、果たして日本軍はいかに反撃するのか?


1巻を読んだ時はどうなることかと思われたのですが、史実と違って日本軍が受け身を取らされたことになった本シリーズはかなりらしからぬ戦略を取るわけです。
すなわちルソン島餓え殺し。
航空戦力は充実しているが、本土と遠く離れていることが弱点。
そこではるばるやってきた輸送部隊を叩く。
史実では攻めも守りも正面戦力の偏重傾向があって、兵站をなおざりにしたのが敗北の要因でもあったのですが、守りに立たされることで発想の転換をしたということらしいです。まぁ中にはしぶしぶ従っている気配もありますが。
米軍が護衛を増加することで戦いが激化し、それでも失敗したことで今度は機動部隊を繰り出してきたことで、GFも切り札を出して決戦となる。
なかなか巧い展開となっていますね。
それに史実にあったような詰の甘さはなく、空海一体となって目的を遂げる。
このあたりのしたたかさは同じく日本軍が守勢で始まった『修羅の波濤』シリーズを思い出します。


ただ世界設定上、昭和18年の開戦なので米軍は艦戦の主力がF6Fとなりつつあり、正規空母エセックス級が量産され、そしてB29の運用が近づいてくるわけです。
そういう意味では前巻と違って今回は日本軍のいいところが見られたけれど、次からはそうはいかないぞって感じですかね。
もっとも航空中央研究所(航空中研)ではジェット機の開発が示唆されていますし、航空技術全般が底上げされているようなので、今までとは違う航空戦の様相が見られるのかもと期待しています。