- 作者: 佐々木譲
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/03/23
- メディア: 単行本
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内容(「BOOK」データベースより)
警察官人生二十五年。不祥事をめぐる玉突き人事のあおりで、強行犯係の捜査員から一転、単身赴任の駐在勤務となった巡査部長の川久保。「犯罪発生率、管内最低」の健全な町で、川久保が目撃した荒廃の兆し、些細な出来事。嗅ぎつけた“過去の腐臭”とは…。捜査の第一線に加われない駐在警官の刑事魂が、よそ者を嫌う町の犯罪を暴いていく、本物の警察小説。
意外と気づかないことですが、いわゆる交番勤務の”駐在さん”は庶民にとって身近な制服のお巡りさんではあるものの、本格的な犯罪の捜査には加わる権限は無く、あくまでも担当刑事からの指示による協力しかできないわけですね。
ある警察官の不祥事によって巻き起こった大規模な人事異動、そして汚職癒着を防ぐために一部署一地域に長く置いておかないという新たな道警察本部の意向が物語の背景としてあり、長年親しんだ部署を離れて駐在勤務になった主人公から見た、道東の小さな町の治安実態を赤裸々に見せ付ける内容となっています。
短編だけに読みやすく内容もあっさりしているのかなと思いましたが、田舎町の独特の習慣やら人々の意識などが章を重ねていくごとに深く掘り下げられていき、長編と同様の読み応えを感じました。主人公目線からの人物描写や感情の起伏が巧みなんでしょうな。
普段は淡々と駐在勤務をこなしつつも、人事異動のあおりで自分よりはるかに現場経験の浅い刑事が誤った対応に怒りを感じた時のような、ここぞというところで熱い刑事魂を垣間見せる主人公にかなり格好良さを感じましたね。
どのエピソードも短くも良い内容に仕上がっていますが、特に最後の「仮装祭」は制服捜査・川久保のラストを飾るにふさわしく、スピード感・読後感ともに最高でした。