3期・89冊目 『もしかして時代劇』

もしかして時代劇 (ハヤカワ文庫JA)

もしかして時代劇 (ハヤカワ文庫JA)

内容(「BOOK」データベースより)
嵐のミス花らっきょうコンテスト会場。スターをめざす17歳の美雪は寒さと尿意に耐えて発表を待っていた。と、突如屋根が崩壊。大量の雨水に包まれた美雪は思わず排尿の快感に身をゆだねたが…。一瞬の忘我の後、美雪は見知らぬ厠(かわや)にいた。そこは秀吉の軍勢に囲まれ落城寸前の越前北の庄城。しかも美雪は、なんとあの茶々姫と入れ替っていたのだ!?―何の因果が戦国時代にタイムスリップ。悲嘆にくれてもよさそうだが芸能人志願はだてではない。恐るべき無知と楽天性を武器に、戦国乱世を生き抜いてしまう、美少女美雪の青春時代劇!

宮本昌孝といえば『剣豪将軍義輝』を代表作として、ドラマにもなった『夏雲あがれ』のような青春時代活劇のイメージが強いですが、本作も同じ流れの作風となっています。*1ただし、だいぶギャグ*2が入っていますが。
現代からのタイムスリップと言えば、複数いれば一人くらい歴史に詳しいやつがいて、解説してくれるのですがこの美雪という少女はスターになるためには勉強は不要*3と考えているために戦国時代の知識は皆無。タイムスリップして茶々姫と入れ替わった先々でもトンチンカンな会話を繰り返すのですが、そこはまぁ持ち前の楽天性と強引さで秀吉や家康といった有名武将たちを翻弄してしまうのが楽しい。


とりわけ歴史に詳しくなくとも、戦国の世を楽しんでしまう美雪と愉快な仲間たちとの道中は楽しめますが、歴史好きでもちょっとニヤリとする場面があったりします。茶の席での勘違いした行動が茶道の新たな流儀が生んだり、出雲の巫女一行と合流してかぶいた格好でパレードをさせたら阿国伝説が生まれたり。太閤秀吉と茶々姫(淀君)には縁があるとされる二人の男(石川五右衛門名古屋山三郎)を仲間として選らんだあたりはうまい。


天下人間近の秀吉に求愛された茶々姫(美雪)が五右衛門、山三郎らとの逃避行の末に小牧・長久手の戦いに巻き込まれる場面がクライマックス。茶々姫(美雪)が秀吉から重大な手紙を握ったと諸将に思われたために大変な騒動になるも結局元の鞘に戻り、何とか本来の歴史の流れに収まったと思っていたら、エピローグで驚きの仕掛けが。最後まで楽しませていただきました。

*1:時系列としてはこちらが先であり、歴史ジャンルへの転換点となったらしい

*2:それはだいぶヒロインの性格にもよるか

*3:もともと苦手なのかと。代りに運動神経抜群なので姫君らしからぬ身体能力を見せる