3期・73冊目 『旭日の鉄十字―日米開戦』

日米開戦―旭日の鉄十字 (C・NOVELS)

日米開戦―旭日の鉄十字 (C・NOVELS)

欧州ではヒトラーの勢力が拡大し、日本でも対米開戦の跫音が聞こえはじめた一九三九年八月。連合艦隊司令長官山本五十六は、二人の腹心佐官をドイツに送り込む。日本の未来を彼らに託すために・・・・・。二年後。ついに日本は米国に宣戦布告、真珠湾を攻撃する。山本の巧妙な作戦が的中し、緒戦を勝利した連合艦隊。だが背後には、復仇に燃える闘将ハルゼーの米機動部隊が追っていた! 架空戦記巨編、開幕!!

前作『クリムゾンバーニング』の終盤はちょっとついていけない部分もあったのですが、新作ではどうやらオーソドックスな設定らしく、そこをどう改変していくのか気になって結局『南洋争覇戦2』と一緒に買ってしまいました。
タイトルを英語読みしてみると仮想戦記読みとしてはボードゲームをモチーフにしたあのシリーズを彷彿させますなぁ(断じて新巻ナントカという作家の艦隊シリーズではなく)。


南雲長官率いる日本の機動部隊が真珠湾を奇襲するというあくまでも史実を踏まえたな展開かと思いきや、零戦を含めた機材が違うし戦術も違う。更に読んでいくとこの世界の歴史背景はまったく変わってしまっていることがわかります。*1
日露戦争に敗戦したとか、第一次世界大戦で経験積んだという歴史改変はまだしも、日米が手を組んでオーストラリア独立戦争を支援したというのは新鮮かも。そのような経過を経て、戦術思想が変わった経緯を書いてくれるあたりは面白い。相変わらず兵器の記述にもこだわりを感じますしね。
ただ、そこまで変えておきながら史実と同様の仏印進駐⇒ハル・ノート、石油禁輸⇒日米開戦(真珠湾奇襲)という流れとするのはやや強引な気はしましたがね。まぁ装備と戦術が一新した日本軍*2アメリカと戦うというテーマで描きたかったということでしょうか。


相変わらず人物のいじくり度は激しいです。特にルーズベルトを始めとする米・独の有名人物を退場させてるし*3、人物の書き方にも癖がありますね。
また前作で様々な特殊技術を披露させた著者ですが、今回は記録映像にやけにこだわっているなと思ったら、外交的な切り札に使ったという筋書き。ただしそのへんはまったく日本軍らしくなくて、ドイツのゲッペルスあたりの影響を受けたっぽいですね。


それにしても、章が変わって唐突に艶本的展開に驚かされたと思いきや前作でお馴染みのあのコンビによるメイドスキーっぷりも健在だったという。喜ぶべきか呆れるべきか…。

*1:首相が宇垣一成になっているところからも国内の政治バランスにも手が加わっているらしい

*2:ドイツから譲渡された巡洋戦艦には「浅間」と名づけられたり・・・するわけないか

*3:謎の事故死が多くて裏がありそう