3期・54冊目 『病の世紀』

病の世紀 (角川ホラー文庫)

病の世紀 (角川ホラー文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
人体を発火させる黴、口腔に寄生し人を人肉喰いに走らせる蠕虫、そして性交渉で感染し、人を殺人鬼に変える「666」に似た形体の謎のウイルス。街に解き放たれた病原体は、黙示録が預言した終末へのカウントダウンなのか―。人々を恐怖に陥れる巨大な陰謀とは?そして立ち向かう孤独な医師の決断とは?バイオテロをも予見した、牧野ホラーこれぞ最高傑作。

俄かには信じがたいような症状を起こす菌やウイルスの数々、滅多に発生しないはずの奇病が次々と連続して巻き起こる謎。不可思議なメッセージを残す発症者。それと戦う医師や研究者たち。
そんなパニック、ホラー、サスペンス的な要素がふんだんに盛り込まれ、かなり興味をそそられる内容ではあったのですが、引っ張られたのは途中まで。事件は狭い範囲だけで完結し、一連の事件を追っていた関係者があっさりと死んでいくあたりで飽きがきて、最後の方は尻すぼみという感じを受けました。


恐るべき微生物の詳細な記述、そして発症者のグロテスクで残虐な描写は目を背けたくなるほど*1であり、個々としては力強さを感じる部分があったので、ちと惜しい気がします。下手に陰謀論*2を持って来ずに、現代における病と人類の叡智との戦いという構図*3にして、もっと壮大な話にできれば最後まで楽しめたかもしれませんね。

*1:ホラーとしての誉め言葉

*2:ネタとしては面白いけど

*3:タイトル的にそっちを想像した