3期・55冊目 『日本怪奇小説傑作集(2)』

日本怪奇小説傑作集 2 (創元推理文庫)

日本怪奇小説傑作集 2 (創元推理文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
日本の怪奇小説は、時代が下るにつれ西洋の作品の色濃い影響のもと、題材手法ともに徐々に変化をとげてきた。現在、海外でも受容され得るような普遍性を備えていることは注目すべきであろう。さらに表面上の類似性を超えた、日本の作品独自の雰囲気が存在しており、ジャンルとしての隆盛ぶりにおいても、欧米をしのぐものがある。第2巻では戦中・戦後初期の傑作16編を厳選した。

2巻目では昭和10〜30年代まで。まさに戦中派とも言える作家も名を連ねています。個人的には1巻よりも読んだことのある作家が増えてますね。
全体的には日本独特の怪談的な怖さよりも、不思議さを感じる作品が多くなっているのは西洋作品の影響もあるのでしょうかね。多くは「怖さ」とはいう面では今ひとつだったけど、別の意味では作品を楽しめました。


特に印象に残った作品はこちら。

  • 橘外男「逗子物語」・・・墓参りで出会った3人連れは実は死んだはずの人間だった。その後主人公の周りで起こる奇怪な出来事。

幽霊にまとわりつかれた恐怖と周りがわかってくれない苛立ちがよく伝わってくる。ただそれだけに終わらず、最後はほんわかする結末。霊に憐れみを抱くというのは日本的な感情なのかも。

  • 久生十蘭「妖翳記」・・・奔放な女主人に振り回されてその魅力の虜となった男が辿りついた結末。

ヒロインのことをもっと知りたいと思った私は術中にはまっているのだろうか?それにしても主人公の精神が狂っていくさまがお見事。

  • 三島由紀夫「復讐」・・・ひたすら復讐におびえる家族の一夜。

全体的に文章が美しいなぁと感じた。それでもって、最後の一言がオチとしてとても効果的。

  • 山本周五郎「その木戸を通って」・・・突如来訪した少女は何も記憶が無かった。しかしその人柄は周囲から愛され主人公と結ばれるが、以前の記憶が徐々に現われはじめて・・・。

じっくり読ませる切ない時代劇というか人情劇。全然怖くは無かったけどとても良かった。こういうのは、謎が明かされないままなのが綺麗なんだろうなぁ。