3期・45冊目 『新本格魔法少女りすか』

新本格魔法少女りすか (講談社ノベルズ)

新本格魔法少女りすか (講談社ノベルズ)

内容(「BOOK」データベースより)
心に茨を持った小学五年生・供犠創貴と、“魔法の国”からやってきた転入生・水倉りすかが繰り広げる危機また危機の魔法大冒険!これぞ「いま、そしてかつて少年と少女だった」きみにむけて放つ、“魔法少女”ものの超最前線、りすかシリーズ第一弾!魔法は、もうはじまっている。

タイトルと主人公が10歳という点では子供向けというかライトな印象なんですけど、amazonのレビュー読んで期待できそうだったので手に取ってみた作品。そうだよな、西尾維新だからまるきり軽いわけはあるまい。まぁ『きみとぼくの壊れた世界』よりはだいぶ読みやすかったけど。
はっきり言って大人向けの魔法ファンタジーとでも言いましょうか。血がどばどば出る*1わ、すぐ人は死ぬわ、変態は出てくるわ・・・。


そして10歳とは思えない主人公・供犠創貴の思考。学校の同級生のみならず世間の大人子供をことごとく愚民として蔑視し、その才能を認めた一部の人間(りすかを入れた魔法使いも含む)のみ自分の手駒としての存在を認める。
うーむ。大人に対する反抗心というか将来に対する希望(野望)もここまで来たら立派なもの。もしかしてヒトラーが芸術家ではなく最初から独裁者を目指していたらこうだったかもしれないと思わせるくらいです。


そんな供犠創貴は口だけではなく、なかなかの作戦家。魔法能力は天才でも性格は普通の子供に近いりすかの参謀役となり、魔法の王国(長崎県)から人間の世界(佐賀県)に父親探しと同時に人間に害を為す魔法使い退治を行うりすかに協力する話となってます。
当然、そういった魔法使いと対峙するには危険が伴い、読んでいてハラハラするのですが、創貴曰く「百害あっても千利ある」のでやめられないそうな。毎回どうやってピンチを切り抜けるかという楽しみがあったりしますし、戦いの結末も読者の予想を裏切る感もあって、単純じゃないのがいいですね。
ダークっぽい雰囲気の中で挿入されるイラストがいい感じ。イラストとかジュースの自動販売機の一番上の段のボタンに手が届かないというエピソードで、そういえば主人公たちは10歳の子供だったんだって気づいたりしたものです。

*1:これはりすかの特殊能力にも関係するのだけど