- 作者: R・F・ヤング他,ジャック・フィニイ,中村融
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2009/10/10
- メディア: 文庫
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内容(「BOOK」データベースより)
時という、越えることのできない絶対的な壁。これに挑むことを夢見てタイム・トラヴェルというアイデアが現れて一世紀以上が過ぎた。時間SFはことのほかロマンスと相性がよく傑作秀作が数多く生まれている。本集にはこのジャンルの定番作家といえるフィニイ、ヤングらの心温まる恋の物語から作品の仕掛けに技巧を凝らした傑作まで名手たちの9編を収録。本邦初訳作3編を含む。
時を超えるという通常ありえない現象の中でこそ芽生えたロマンスを描いた珠玉の短編集。私にとって初めて知る作家ばかりで、かつ比較的古い時代に書かれたものばかりですが、その佳さは色あせないですね。
- ウィリアム・M・リー「チャリティのことづて」
およそ250年の時を超えて偶然同じ場所で熱に冒された少年と少女が意識と体を共有することに。
こういう設定は珍しい。気持ちが通いあいながらも決して結ばれることのない二人ではあるものの、時を超えて伝えられたことづけにぐっとくる結末。
- デーモン・ナイト「むかしをいまに」
序盤は?がついた印象だったけれど、読んでいくとその意図はわかる。いわば人生逆送りの様を描いたユニークな作品。
- ジャック・フィニイ「台詞指導」
映画撮影用に用意されたレトロなバスを走らせて町の人を驚かそうとする悪戯心から不思議な体験へ。ほんの一時の出会いに時の悪戯が女優の心情を動かすという変わった一期一会を味わえる。
- ウィルマー・H・シラス「かえりみれば」
30歳のミセスが15年前の自分にタイムスリップ。
学生時代に戻りたいと願う大人は多いかもしれないが、実際はいいことばかり待っているわけではないわけで。主人公は懐かしさと同時にいかに自分が忘れていることの多さを痛感させられる。それでもやっぱり主人公に訪れたような不思議な体験を一度くらいは味わってみたいと思ってしまう。
- バート・K・ファイラー「時のいたみ」
なぜか意識は元のままで10年後の体を持ち帰ってきた主人公。どうやら10年の間に体は鍛え抜かれて足の障害も苦にならなくなっていた。そしてその理由が今明かされる。
大切な妻を守るその一瞬のためだけに10年の時を費やした主人公。もし自分が愛する人を失ったとしたら同じことを考えるかもしれない。
- ロバート・F・ヤング「時が新しかったころ」
未来から恐竜の闊歩する時代に調査に来た主人公は、当時先進文明を誇っていた火星生まれの少年少女に出会う。彼らは誘拐犯の元から逃げ出してきたのだが・・・。
短かくも結末に繋がる伏線となるエピソードがきちんと詰め込まれていて、主人公と子供たちの会話も楽しく、個人的にはこの中でベスト作品。
- チャールズ・L・ハーネス「時の娘」
タイムパラドックスをメインにした母娘の相克を描いている。タイムスリップものに慣れていると途中でからくりが見えてしまうのだけど、あのアイデアを娘の方から言い出したというのは興味深いもの。
- C・L・ムーア「出会いのとき巡りきて」
世界中で冒険をし尽くしてきた男が次に挑むのは時の冒険。時の狭間で見た娘を何万年の時をかけて探しやがて巡りあう幻想的な作品。最後がちょっと意味わからなかった。
- ロバート・M・グリーン・ジュニア「インキーに詫びる」
主人公がかつての女友達(彼女?)に会いに行く過程で、トラウマとなった雑種犬(インキー)が亡くなった少年時代の体験などが次々と視界に入ってくる。同一人物の過去と未来が交差する変わった内容。ちょっとわかりづらかった。