9期・38冊目 『神の血脈』

神の血脈

神の血脈

内容(「BOOK」データベースより)
時は幕末。開国を求めて黒船で日本にやってきたペリーは、不思議な能力をもった男・乾風之助に迎えられるのだが…歴史を動かしてきた乾一族。五千年前に異星人から与えられた能力とは何なのか。壮大なスケールで描く、伝奇SF小説。第6回小松左京賞受賞作品。

勝小吉(勝海舟の父)はある日、江戸の市中で不思議な若侍に出会います。
まるで小吉の心中を読み取ったかのような挙措を示した侍は乾風之助と名乗り、その日から風之助と勝親子の不思議な縁が始まります。
当時の旗本にしては広い視野を持ち好奇心旺盛な勝海舟に対して、何度か導くように現れては驚きの先進技術・知識を授ける風之助。
まるで海舟が将来、日本史上の重要な役割を果たすことを期待しているかのように。
実は乾の一統は四千年の昔に異星人と接触したことから、その恩恵によって代々世界水準より高い知識と身体能力を有し、影から日本の歴史を動かしてきたのだという・・・。

日本史上のターニングポイントである黒船来航を機に勝海舟への影響にのみならず、老中筆頭の阿部正弘の政治顧問役を密かに務めていて、更にペリーの乗船に隠密会見(異星人の技術を使ってだが)までやってのけて、ペリーの対日方針に多大な影響を与える。
まさにこの一大歴史イベントを両国(少なくとも当事者たち)にとって好ましい結末に導こうと動いている様が描かれます。
主人公である乾風之助は常人離れした能力を有していますが、それも変に気負っているわけでもなく飄々していて、勝海舟らに見たことも無い技術を見せるあたりは悪戯心に溢れていますね。
遺された異星人であるヨサム(実体はなくて鴉など動物の体を拝借している)と乾家の人々との会話などは妙に人間臭さがあって、人間を超越した存在というより親密な友人のよう。
実はそのあたりに深い事情が隠されているわけですが。


小松左京賞受賞作品だけあって、確かにかつての小松左京作品を彷彿させる歴史SFです。
ただ作中で宇宙進出可能となる未来を示唆する記述があるだけにもっと長い期間を描くのかと予想していたら、黒船来航のみで終わってしまったのが肩すかしでした。続編はあるのでしょうか?


【追記】
続編ではないですが、源平の戦いから元寇までを舞台にした乾一族(今度は姉妹)とヨサムの物語が発表されているようです。
時代を飛び越えたシリーズものになるようですね。

鎌倉繚乱―神の血脈

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これもいつか読んでみようかな。