3期・35冊目 『太陽の簒奪者』

太陽の簒奪者 (ハヤカワJA)

太陽の簒奪者 (ハヤカワJA)

内容(「BOOK」データベースより)
西暦2006年、水星から突如として噴き上げられた鉱物資源は、やがて太陽をとりまく直径8000万キロのリングを形成しはじめた。日照量の激減により、破滅の危機に瀕する人類。いったい何者が、何の目的でこの巨大リングを創造したのか?―異星文明への憧れと人類救済という使命の狭間で葛藤する科学者・白石亜紀は、宇宙艦ファランクスによる破壊ミッションへと旅立つが…。新世紀ハードSFの金字塔、ついに文庫化。

先進文明による謎の物体が出現したという点では『星を継ぐもの』を彷彿させますが、人類に何をもたらすかにより大きな違いがあります。これが災いをもたらすようなものであれば、できうる限りの手段を用いて排除するのが当然ですが、果たしてどういう目的で作られたのであるか、それを作った異星人とのコンタクトは可能かという大きな疑問も残るわけです。


異星人との遭遇というありふれたテーマではあっても、リアリティ溢れるサスペンスSFと言っていいでしょうか。私にとっては、散りばめられた科学技術用語には難しく感じる部分もあったのですが、かなり早い展開*1と謎解きの面白さによって、まったく飽きるようなことはありません。そういう意味では、作品世界において約50年間にわたる年月の長さの割には、地球の社会情勢や登場人物たちの心理描写はかなり省かれています。まぁこれくらいコンパクトな方がすんなり読めていいのかもしれません。
それにしても、最後に明かされる異星人の実態にはやや驚きつつも、こういうのも有りえるのかもと妙に納得させられました。きっと宇宙は想像を越えることばかりなんでしょうねぇ。

*1:各章だけで長編1本に膨らませそうな魅力的なストーリー