3期・9冊目 『愛はさだめ、さだめは死』

内容(「BOOK」データベースより)
自然と本能のまえにとまどう異星生物のライフサイクルを、斬新なスタイルで描き、1973年度ネビュラ賞に輝く表題作ほか、コンピュータによって他人の肉体とつながれた女の悲劇を通して、熾烈な未来社会をかいま見せ、1974年度ヒューゴー賞を獲得したサイバーパンクSFの先駆的作品「接続された女」、ユカタン半島に不時着した飛行機の乗客が体験した意外な事件を軸に、男女の性の落差を鋭くえぐった問題作「男たちの知らない女」など、つねにアメリカSF界の話題を独占し、注目をあつめつづけたティプトリーが、現代SFの頂点をきわめた華麗なる傑作中短篇全12篇を結集!

先に作品を読んで渋い中年男性作家のイメージを抱いてから、冒頭の紹介文で象徴されているかのような作者の正体をめぐる騒ぎの顛末を知ったのだったら、70年代のSFファンと同じ衝撃を味わえたのかもしれないなと思ったり。
前知識があったせいか、単にSF歴少ないせいか、実は女性だったから内容がどうのこうのとは感じなかったのですが、いずれにせよ異世界の話にも関わらず導入の巧みさや、設定の斬新さを感じるのは変わらなかったでしょうね。


翻訳によってかだいぶ表現が豊か(というか、かなりはじけていたりする)だなぁと思ったのですが、それが作品によってマッチしているのとやや空振り気味なのと分かれているような気もするのですね。
思わず異星生物に感情移入してしまうほど引き込まれる表題作*1や、大作映画の終盤部分を思わせるような劇的な展開を見せる「最後の午後に」それに「接続された女」は特に強い印象を抱きますね。「乙女に映しておぼろげに」は登場人物の二人のやりとりだけの短編なんですが、とってもユニーク。
反面「すべての答えはイエス」や「楽園の乳」はよくわかなかったかなぁ。

*1:子供の頃に読んだ動物もの思い出したのだけど、架空の生物の生態でここまで心動かされるとは。