8期・73冊目 『スケルトン・クルー2 神々のワードプロセッサ』

内容(「BOOK」データベースより)
不思議な機能を持ったワード・プロセッサと、それを手に入れた男の運命を描いた表題作『神々のワード・プロセッサ』、テレポーテーションされる少年の恐怖を描いたSF『ジョウント』、そして、猿のシンバルの音にこめられた死の影『猿とシンバル』など、ホラー王キングの短編集待望の登場!!詩1編を含む恐怖と戦慄の6編。

スティーヴン・キングのホラー短編集『スケルトンクルー』シリーズの第2弾は6編の短編(後の方の2編は比較的長めの中編と言えるかも)が収められています。
どれも短いながらもストーリー・テラーたるキングの面目躍如たる秀逸な作品ばかりで、長編とは違った面白さを感じさせますね。
作品の紹介と簡単な感想を書いておきます。


「パラノイドの唄」
パラノイド(偏執症または誇大妄想症患者)の言葉を垂れ流したような詩編
一冊を読み終えた後に振り返ると本書のテーマソングみたいな印象を受けますね。


「神々のワードプロセッサ
早逝した甥が手作りしたワープロ
それに書いた文章が現実にも反映されると知って・・・。
まるてドラえもんの道具みたいなアイデアものですね。本当にあったら嬉しいですが(笑)
実はハッピーエンドだったのが意外でもありました。


「オットー伯父さんのトラック」
オットー伯父と共同経営者ジョージョ・マカチャンは事業に成功したが、ある日マカチャンがトラックから転げ落ちて潰されてしまった。
トラックを譲り受けた伯父だが、年を重ねる連れて徐々に狂っていってしまう。
精神異常者の妄想とも言い切れない怖さを感じましたね。


ジョウント
ジョウントというテレポート技術が偶然発見された時、無生物は問題無いのに生物のジョウントはその対象に死をもたらす。その原因は何なのか?
ジョウントの運用が一般的になった未来、ある家族がそれを受けようとするのですが、息子が禁忌を破ってしまって・・・というオチ。
怖いもの知らずの子供の冒険心が取り返しのつかない事態を招くというのはありがちですね。
やや設定が甘いあたりがSFとは言い切れないのかもしれません。


「しなやかな銃弾のバラード」
年老いた編集者が語るある天才作家の話。
作家はタイプライターの中にフォーニットという小人が住んでいると本気で信じていた。それをFBIやらCIAやらが狙っていて、彼らの陰謀である電話や電化製品を遠ざけるようにして暮らしていた。
最初は話を合わせていた編集者だったが、次第に彼の妄想に影響されてしまう。
天才と気違いは紙一重と言いますか、妄想は伝播するのかと言いますか。
読んでいるこちらも気が変になりそうでした(笑)


「猿とシンバル」
ぬいぐるみの猿がシンバルを叩くごとに、誰かしらが死ぬと子供時代のハルは信じていた。
猿をどこに捨ててもいつの間にか戻ってきてしまう。
そして大人になって家庭を持ったハルは昔住んでいた家を訪れた後、持ち物の中にあの猿のぬいぐるみが紛れ込んでいることに戦慄する。
始めは子供の妄想かと思っていたら・・・歯をむき出しにして笑う猿のぬいぐるみが夢に出てきそうな怖さを感じさせられます。
本作の中で一番良かったですね。