2期・91冊目 『玩具修理者』

玩具修理者 (角川ホラー文庫)

玩具修理者 (角川ホラー文庫)

具修理者は何でも直してくれる。独楽でも、凧でも、ラジコンカーでも…死んだ猫だって。壊れたものを一旦すべてバラバラにして、一瞬の掛け声とともに。ある日、私は弟を過って死なせてしまう。親に知られぬうちにどうにかしなければ。私は弟を玩具修理者の所へ持って行く…。現実なのか妄想なのか、生きているのか死んでいるのか―その狭間に奇妙な世界を紡ぎ上げ、全選考委員の圧倒的支持を得た第2回日本ホラー小説大賞短編賞受賞作品。

普通に怖くて面白かったです。親の折檻から逃れるために異様な行動を取る子供の心理がよく描かれているし、ラブクラフト作品からモチーフを取ったと思われる玩具修理者がなんとも不気味。
そして最後にアッと思わせるオチが秀逸。短編ならではきりの良さはそれはそれでいいのですが、せっかくの玩具修理者というネタをもっと膨らまして別の話にしても良かったんじゃないかなと余計な望みを持ってしまったりしました。*1


もう一つ収録された小長編「酔歩する男」は最愛の女性を救う為にタイムスリップ研究に挑み、辿り着いたのが脳にある処置をすること。
その副作用みたいな現象で悪夢の世界にはまってしまう男の話。一度眠るたびに次に目覚める時間・状況が変わってしまい、それを自分では制御できない。つまり意図しないタイムスリップを毎晩繰返してしまうと言えばいいのか。かと言って人間いつかは寝ないわけにはいかない。*2そして死ぬこともできずに永遠に時空の狭間を彷徨い続けるという恐怖。
そうなってしまった理由づけとして、パラレルワールドとか時間の認識の連続性とか小難しい話が展開されるのがやや長く感じるのですが、まぁそれは仕方無い。
やはりここも最後の主人公のうろたえっぷりがいいですねぇ。何と言うか、笑ゥせぇるすまん的。最近物忘れが増えたなぁを思う人にはお薦め(笑)
こちらはどちらかというとSF的な話であり、最初からホラーと考えないで読んだ方がラストの怖さを感じるかも。

*1:子供が玩具修理者の正体を知ろうとして怖い目に遭うとか

*2:寝てしまうと○○な目に遭うので、何とか眠らないように我慢しつづけるという話は昔どっかの漫画で読んだなぁ