2期・46冊目 『恐怖の四季 - 秋冬編 スタンド・バイ・ミー』

秋編 スタンド・バイ・ミー

映画を見たのはどれくらい前なのか思い出せないけれど、ベン・E・キングの同名曲とともにシーンがいくつも脳裏に残っているくらい印象に残る作品でした。
映画の方が一夏の冒険をメインとした青春物として語られるのに対して、原作の方は主な登場人物である4人の少年達の抱える家庭の事情、それに関連して起こる(過去に起こった)出来事を通しての友情が深く描かれています。そこは登場人物のバックグラウンドまで書ける小説ならではですね。
あと映画と違うのは、冒険の目的である、死んだ少年の存在が4人の心中で徐々に存在感*1が強くなっていったり、人の死というものを深く考えたりするあたりが『恐怖の四季』の一編らしいところじゃないかと思うのです。


主人公・ゴードン少年の視点で描かれる、1960年代アメリカにおける時代の雰囲気というものはさすがに生まれる前のことなので掴みづらいですが、友人同士で遠くに冒険に出かけるワクワクした感じとか、友人との約束が何よりも替え難い大事なものだと思う気持ちにすごく共感できますね。


以下、余談です。
生まれ育った町では営業キロにしてわずか10kmほどのローカル線が走ってまして、私が中学にあがる前に廃止されてしまったのですけど。
映画を模倣したのか定かじゃないですが、友人と始発駅から線路の上を歩いたことがありました。
あの線路という奴はなぜか年頃の少年をして、歩かせたくなる何かがあるんですよ(ホントか?)。
終着駅まで行ってやる!と気勢をあげていたわりには、最初の駅(無人)に着いたところで飽きてやめちゃったので、情けない話ではあります。


冬編 マンハッタンの奇?クラブ

日本風に例えるならば、神田か銀座あたりの雑居ビルに、ひっそりと営業しているバーがあって、中に入ると大正〜昭和初期の時代をそっくり再現してあり、まるでタイムスリップしたようだ・・・そんな感じで脳内変換したらおかしいかなぁ。
とにかく店内には現実の世界とリンクしない奇書が多数並べられ、マスターから他の客まで独特の雰囲気を醸し出している。
クリスマス・イブの夜、ある老医者が語った奇妙な体験談・・・。
主人公がクラブで非現実的な経験するあたり、日本人作家のSFでこういった作品を読んだような気もするんですが。
全編に漂う雰囲気は悪くないのですが、いかんせん地味な話で惹きつけるものはあまり感じないです。特にスタンド・バイ・ミーの後では。

*1:時には悪夢として出てきたり