3期・33冊目 『銀河市民』

内容(「BOOK」データベースより)
太陽系を遠く離れた惑星サーゴンでは、およそ時代おくれな奴隷市場が開かれていた。薄汚れ、やせこけた、生傷だらけの少年ソービーを買いとったのは、老乞食バスリムだった。だが、ただの乞食とは思えぬ人格と知性を持ち、ときおり奇怪な行動を見せるバスリムとは何者?銀河文明のかげでめぐらされる陰謀と自分の出自を探るべく、ソービーは人類発祥の星である地球へと向かうが…広大な銀河を舞台に描く傑作冒険SF。

久しぶりに海外作家のSFも読んでみようと思い、まずはロバート・A・ハインラインから。前にお薦めしてもらった中から本作を選んだのは、あらすじもそうですがジャケ買いもありますかね。
冒頭、奴隷としてさえ価値がつかないほどみすぼらしい少年だったソービーが、養父バスリムの教えや、宇宙に飛び出して出会った人々からの影響によって成長していき、自らの手で人生を切り開いていく、そんな物語です。
催眠療法によってソービーには封印された過去があることがわかり、それに関係するのかバスリムの秘密めいた行動。このあたりは巧妙に読者の興味をかき立てます。
突然彼らを襲った官警の手を逃れ、惑星サーゴンを脱出したソービーはバスリムの遺志もあって、成り行き上自由商人の仲間となります。新たな保護者である船長のもと、様々な惑星を訪れて奇妙な異星人との商売したり海賊船との生き残りをかけた戦いのあたりはとても詳しく書かれていて、中には愉快なエピソードもあって退屈させません。でも商人の一族のしきたりに関してはどうも奇妙すぎてあそこまでのデテールが必要であったのか少し疑問でした。


やがてソービーは出自にまつわる謎を解くために宇宙軍勤務を経て地球へ。
地球での彼の正体は、冒頭の描写を思い浮かべるとこれまた随分な違いなんです。しかし、そこで安穏な生活に浸りきらずに、バスリムの果たせなかった使命のために敢えて厳しい道を選ぶソービーに精神的な成長を見ます。
両親と幼き自分が遭った事故の謎と会社の暗部を探るため、従姉や老弁護士の助けを借りながら新たな戦いに挑む。
ラストへ向けてのストーリー展開はとてもいいのですが、贅沢を言えばもう少し最後の山場は盛り上げてくれても良かった気がしますね。