62,63冊目 『傭兵ピエール(上)・(下)』

傭兵ピエール(上) (集英社文庫)

傭兵ピエール(上) (集英社文庫)

傭兵ピエール(下) (集英社文庫)

傭兵ピエール(下) (集英社文庫)

偶然ですが『双頭の鷲』を先に読んでいたので、中世フランスの地名とか人名に親しみやすくて良かったですね。
『双頭の鷲』の最後幕からおよそ約半世紀後といったあたりですか。*1ベルトラン・デュ・ゲクランやシャルル五世・王弟アンジュー公ルイといった名がちらほら出てきてのがちょこっと嬉しかったりしました。


極めて有能な戦争技術者である傭兵隊のシェフ(リーダー)・ピエールは、同時に悪逆非道なる盗賊でもあります。
そんな彼がジャンヌ・ダルクに出会い、戦いを共にしていくうちに、いろんな面で影響されていきます。そして互いに惹かれあうものの、それぞれに置かれた立場の為に別れざるを得ない二人。
英仏100年戦争後半の様相とともに、この波乱万丈なる愛の行方も大いに気にかかるところです。


ところでジャンヌ・ダルクと言えば、教科書的な内容以上は知らなかったのですが、佐藤賢一の手によって、まさにこんな感じだったのでは?という具合にうまく書かれていますね。もちろんフランスの立場から見た印象ですが。
救国の英雄だったはずが、わずか2年後にイギリスの虜囚の立場になったというのも、王侯貴族達の思惑など背景がちゃんと書かれているので納得です。
で、一般的な説明としては、そこで火あぶりの刑に処せられたのですが、実は別人だったとかいくつか異説があって、おそらくそのあたりも取り入れて書かれているのでしょう。そうでなければ下巻の前半で話が終わってしまいます(笑)


ちなみに本編では、

といった順でヒロインに劇的な変化が訪れるのを機に名称が変わるといった手法がとられています。


その後のピエールとジャンヌ・ダルクは紆余曲折あるのですが、まぁ最後はハッピーエンドと言えましょう。ピエールの印象が物語の最初と最後ではだいぶ違うのですが、丸くなった反面、懐が深くなって男としてだいぶ成長したんだなぁと思います。
ピエールの弟や部下達はどう思おうが、似合いのカップルではないかと。

*1:デュ・ゲクランとシャルル五世の死が1380年。そしてジャンヌ・ダルクが歴史の表舞台に登場するのが1428年。