2期・22冊目 『カエサルを撃て』

カエサルを撃て (中公文庫)

カエサルを撃て (中公文庫)

はてなTOPページの注目のエントリにもしばしば登場する某有名ブログ*1にて、塩野七生ローマ人の物語』のユリウス・カエサルの章と読み比べてみると面白い、と知ってから長らく経ってしまいましたが、ようやく読むことができました。
途中まで読んでから「しまった!」と思ったのが、『ローマ人の物語』の該当箇所を読んでから年月が経っているので、舞台となるガリアの地理とか勢力関係が全然思い出せないこと。本作では歴史的な出来事の描写はあっても、地理に関しては大雑把な地図しかついていないので。
ローマ人の物語』を読み返すか、ついでながら元の『ガリア戦記』自体も読んでみれば良かったですね。


まぁ、それは別としても佐藤賢一版「ガリア戦記」は充分楽しめることは楽しめます。
共和制から帝政へ移行させ、ローマ帝国の繁栄へと導いたローマ史上の巨人とも言えるユリウス・カエサル
軍事のみならず政治手腕にも優れ、大衆からの人気も抜群ですが、実はコンプレックスに凝り固まり、外見や印象に極度に気を遣う中年として描かれます。
対するヴェルチンジェトリクス(ウェルキンゲトリクス)は若干20歳の若さでガリア諸部族をまとめあげ、己の正義の為にはどんな犠牲も厭わず邁進する若者。
この2人の対比が面白い。
というかこの中では、カエサルよりヴェルチンジェトリクスの言動にユーモアと格好よさを感じてしまうのですが。*2


確かに主人公はヴェルチンジェトリクスではあるものの、彼の存在によってカエサル自身が変わっていく様も見もの。
英雄は最初から英雄であったのではなく、強力なライバルの存在、そして弱い自分自身に打ち克つことによって英雄となるさまを感じました。

*1:dainさんとこの「スゴ本」のことです

*2:ただしいくら目的(男同士の敵愾心を煽るとか)があっても、性的描写の多さにはさすがに辟易することも