高尾山に行ってきました。

前は年に一度くらい、友人とハイキングというか軽登山に行っていたんですよね。
それが新型コロナ流行によって休止せざるを得ませんでした。
今年になって三年ぶりに再開することになり、梅雨の晴れ間の土曜日、高尾山に行きました。

高尾山マガジン

私は大学に入ってすぐのゴールデンウイーク、入学早々に出来た友人たちと高尾山に行ったことがあります。その時以来なので、かなーり久しぶりです。
ん十年前なので、当時のことはすっかり忘れてしまいました(笑)
行きは中央線で行ったのですが、帰りは京王線を使い、京王線の方が安いことに気づいたのを憶えています。

さて、当日の天気は晴れで、気温も30度くらいまで上がるとの予報。
高尾山口駅に到着した時点で暑くなっていました。
賑やかな駅前通りを通って、薬王院の表参道である1号路を登っていきました。きれいで登りやすい道ですが、いきなりの急こう配です。
リフトとケーブルカーの到着駅まで40分くらい。登山に慣れている人なら朝飯前の距離でしょうが、体力不足な身には堪えました。おまけに暑くて汗だく。

ケーブルカーで来たと思われる人たちで賑わう高尾山駅前を通り、さる園、たこ杉を通り過ぎて4号路に入りました。
こちらは渓流が近くて、川のせせらぎを聞きながらを行きます。日陰が続く平坦な道だったので快適でした。

吊り橋を渡ってしばらくすると今度は山頂への登り道。途中から階段が続きます。
高尾山の標高は約600m。前に登ったことのある山に比べれば低くて、時間も短く済んだのですが、それでも登りは大変でした。自身の体力が落ちたのと、暑さがきつかったですね。

冬の天気が良い日は富士山が見えるそうです。雲もあって、さほど眺めは良くなかったかな。
土曜日で晴れたこともあって、山頂付近は大賑わい。ケーブルカーで来てから山頂まで歩く人も多くいたようです。家族連れやグループも多かったですからね。その分、道が混雑して通りにくかったです。

お昼はビアマウントに決めていました。
高尾山展望レストラン
13時のオープン前に整理券を配ります。一時間に行ったら、幸いなことに30番台でした。
料金先払い(大人4300円)で中に入りました。始めは外のテラス席にしようとしたのですが、中の席の方が冷房が効いている上に眺めがいいこともあって中に入りました。
ずっと前にデパート屋上のビアホールで飲んだことがありますが、高い割には食事はしょぼいもの。
でも、ビアマウントはバイキング形式で食事の種類はそこそこ多かったです。しかも、8種類のビールが飲み放題だから、ビール好きにはたまらないでしょう。ビール以外にも、チューハイ系やソフトドリンクも充実していました。*1

数百人規模なので食事を取るのに少々並びますが、二時間の制限時間内でお腹いっぱいになりました。初めて入りましたが、満足ですね。

帰りはさすがにケーブルカーを使いました。ケーブルカーだとあっという間に到着しました。
埼玉県のうちからは遠くて朝が早かったですが、昼から飲めて早く帰れました。都内に住んでいる人ならケーブルカーを使って気軽に来れるのがいいですね。

*1:ビール以外はセルフ式。

ダイスケ 『庭に穴ができた。ダンジョンかもしれないけど俺はゴミ捨て場にしてる 1』

ある日、家の庭に穴があいていた。
ゴミ穴にちょうどいいので、ゴミを捨てた。
家庭ごみを捨てた。
事業ゴミを捨てた。
建設ゴミを捨てた。
まだまだ穴は埋まらない…

現実に庭にぽっかりと穴が空いていたらどうするか。それも底が見えないくらいの深い穴。
根は小心者の主人公は欠陥土壌だったのかと心配になります。大地震や大雨の時に家屋が傾いてしまうのではないかと。
かといって、すぐにどうすることもできず、とりあえず埋めておくんですね。ついでに燃えるゴミを放り込んでから。
しかし、翌日になると、穴は発見した時と同じようにぽっかり空いている。
主人公は事業ゴミの処分費が浮いたとばかりに毎日せっせとゴミを放り込みます。
どんなにゴミを捨てても穴は塞がることはなく、むしろ広がっている様子でした。
中はどれだけ広い空間が広がっているのか。
そこで主人公は思い付きます。
今はどの事業者も不用品の処分に頭を悩ませている。この穴を利用して処分を引き受けてみるかと。
むしろ、どんどん穴に放り込んでいかなくちゃという思いに駆られます。
それから主人公はリサイクル業より、ゴミ処分が本業となっていきます。といっても穴に捨てるだけ。
本格的にゴミ処分を行うようになってから、なぜか主人公の体は調子が良くなっていくのでした。
どんなゴミだろうが穴に捨てるだけ。処分費用は一切かからず、人件費も自分だけ。こんなに美味い商売はありません。
そこを怪しいと見る人は出てくるわけで、ヤクザに目をつけられてしまうのですが・・・。


小説家になろう」にて掲載中のweb小説です。
庭に穴が空いて、そこは現代にできたダンジョンだった。魔物も出るけど、お宝も眠っていて・・・。
そんな内容の小説がいくつか書かれていたこともありました。
本作は脱サラして田舎に引っ込み、零細リサイクル業を営んでいる中年男が主人公で、これも同じような内容かと思わせておいて、まったく違っています。
主人公の成長というより変貌に見る「俺強え」感はありますが、どちらかというと欲望に目がくらみ、穴に引き寄せられた者たちが消えていくホラーな内容です。そこに触れてはいけない的な。
物語が進むの共に主人公の環境は拡大方向に進化していきます。主人公自身も中身はさえないおっさんなんですけど、どこか変わっていくのですよね。そこに目が離せなくなっていきます。
穴の中の描写はごく簡単にしか描かれていないので気になりますが、あえて伏せているのが不気味ですよねぇ。
地獄のような恐ろしい世界が広がっているような気がしてなりません。

楽天イーグルス対日本ハムファイターズ(2023年4月21日・楽天モバイルパーク宮城)観戦

2023年シーズンが開幕しました。
去年は3,4月に好調で、球団新記録となる11連勝を飾るなど、貯金18まで貯めました。そのまま優勝かと思いきや、夏場にかけてまさかの大失速。ずるずると順位を下げて結局4位に終るという悔しい思いをしました。

今季は開幕カードの日本ハム戦こそ勝ち越したものの、去年とは真逆の低調ぶり。
防御率も悪いですが、極度に打線が冷え込んでいます。ホームランは時々出るものの、とにかくタイムリーで点が取れない。
なにしろ主軸である浅村・島内の両選手など、主力が打率1割台でしたからね。
もっとも、浅村選手は前のカードで一発が出たし、島内選手もいい当たりが出てきました。唯一勝ち越している日本ハム戦で調子を取り戻したいところ。
そんなわけで今季初の本拠地観戦です。個人的に本拠地での観戦では負けてばかりなので、今度こそ勝利をを目にしたいです。

当日は予定通り16時過ぎに到着したので、イーグルス豚まんと唐揚げを買い、席に向かいました。今回は三塁側バックネット裏後方の席です。
時間があったので試合前の様子を見られたのが良かったですね。


先発は田中将大投手。まだ3試合ですが、今季は抜群の安定力なので期待できます。

もっとも相手先発は去年苦しめられた天敵左腕の一人・加藤貴之投手です。開幕戦では2本のホームランによって勝利を収めたので、今日も右バッターに期待したいところ。
初回に島内選手の2塁打が出て、浅村選手の犠牲フライで幸先良く先制。タイミング的に厳しいかと思いましたが、送球が逸れてラッキーでしたね。

田中将大投手は4回まで1安打ピッチング。ただし打線も2回から4回まで内野安打1本のみで抑えられていました。このまま投手戦、1点の攻防で進むかと思われました。

悪夢が訪れたのは5回でした。
いきなり先頭打者に2塁打。バントを決められて一死3塁のピンチを招きます。ここで三振を取っておきたいところ。
しかしタイムリー3塁打という最悪の形で同点にされます。次打者は三振に取り、二死まで来たところで気が抜けたのでしょうか。痛恨の暴投で勝ち越しを許しました。とはいえ、まだ5回。1点差で終りたいところ。
願いはむなしく連続四球で満塁のピンチ。おそらくきわどいところを狙ったのが、ことごとく見極められたのでしょう。
その後に連続でタイムリーを浴びて、あっという間に点を取られていきます。
6点取られたところで酒居投手に交代しましたが、勢いは止められずにもう1点取られます。結局打者一巡で7点。すごく長く感じられました。

もし中継なら、この時点で観るのをやめていたかもしれません。苦手とする加藤投手で6点差は絶望的。
しかし、遠くから現地に来たファンとしては最後まで見守るつもりでした。風が強くて寒くなっていましたが。

いったんトイレで席を外していたら、どよめきが聞こえてきました。
一死から連続安打で満塁になったのです。味方の長い攻撃は加藤投手の気持ちやリズムに影響が出たのでしょうか。
この絶好のチャンスを潰すことなく島内選手がタイムリーで2点返します。浅村選手は倒れたものの、フランコ選手はファーストとライトの間に落ちるラッキーな安打でもう1点追加。
大量リードを取られたものの、裏にすぐ3点取り返したのが大きかったです。観ている方も希望が見えてきました。

6回表は宮森投手が先頭打者こそ安打で出したものの、三者連続三振で締めました。
その裏、一死から山崎剛選手のヒットが出たところで投手交代。代わった投手から伊藤裕季也選手が繋ぎ、小郷選手のタイムリーで1点返します。
今までなかなか出なかった連打とタイムリーがこうまで続くなんて。今日はいけるぞという感じがしましたね。

7回表は安樂投手がピンチを招くもなんとか無失点で切り抜け、イーグルスのラッキーセブンを迎えます。ランナーは出しましたが、併殺で終ってしまいました。一時は好調だった安田選手も落ち込み気味ですね。反撃の流れが切れてしまったのが痛い。

8回表は宋家豪投手。五十幡選手に盗塁を許してしまいましたが、浅村選手のファインプレイで併殺に取れました。再び流れはイーグルスに戻ってきたような気がしました。
その裏。代打・西川遥輝選手の今季初ヒットがホームラン! これで1点差です。
次の代打・鈴木大地選手がヒット。代走の辰己選手が盗塁を決めて、一打同点のチャンスだったのですが、ものにできませんでした。

ついに最終回。表を鈴木翔天投手が抑え、裏は田中正義投手が出てきました。印象としてはきついかなと思ったのですが、浅村・フランコ選手が連続安打。太田光選手がバントを試みるも2回ファウル。かなりのプレッシャーだったのでしょう。なんとスリーバントを成功させて、田中投手の送球ミスを招くのです。
1点を追う9回裏で無死満塁。球場はおおいに盛り上がります。悪くても内野ゴロか犠牲フライで同点にして欲しい。三振だけは避けて欲しいと願いました。
そこで西川選手は巧くライト前ヒット。各走者が進んでついに同点! なおも満塁は続くわけで、最高のお膳立てを作ってくれました。そして山崎剛選手が強振して、あわやホームランかという大飛球が右中間に飛んでサヨナラ勝ち。

それにしても、本拠地観戦での初勝利がサヨナラ勝ちとはびっくりです。たまに中継でサヨナラ勝ちを見ると、現地観戦していた人はラッキーだよなぁと思っていましたが、自分が見届けるとは思いもしませんでした。
しかも、6点差をひっくり返して勝ったんですからね。こんな劇的な試合はそうそう観られるものじゃありません。

てっきり今日は投手戦で1点を争う展開を予想していましたが、それが8-7というスコアになるとは思ってもみませんでしたね。
ともあれ、カード初戦、しかも昨季は連敗が続いた金曜日にまた勝利できたのは大きい。

ようやくビクトリーセレモニーとヒーローインタビューを見ることができました。実際には遠いので、ヴィジョンと両方を見比べていましたが、それでも感動しましたね。




打ち上げられた花火を撮ろうとしましたが、ちょっと遅れてしまいました。

ヒーローはもちろん西川選手と山崎剛選手でした。


試合を通して感じたのは、日本ハムの打者は二巡目以降がしぶとく、畳みかける攻撃をするという点ですね。若いチームだけに勢いに乗りやすいのかも。
逆に追いかけられる展開となると、もろさが出るのでしょうか。リードを取ってからは守備の乱れが目につきました。イーグルスは5回に暴投こそありましたが、リリーフ陣と守備は良かったですね。リプレイ検証が二度ともイーグルス有利な結果に終ったのも合わせて流れに乗れた気がします。

楽天イーグルスは4/23時点で7勝11敗の5位。今週火曜から6連戦が始まり、ソフトバンク・西武という強敵と当たります。
とはいえ、打線は調子を取り戻してきた感じはしますね。岡島豪郎鈴木大地選手が一軍に来てから良くなった気がします。頼れるベテランに加えて、伊藤茉央・内星龍という若い投手が結果を残してくれたのも嬉しい。
去年とは逆パターンでにここから順位を上げていって欲しいものです。

横山信義 『連合艦隊西進す4 地中海攻防』

欧州奪回を目指す日英連合軍はドイツ・イタリア枢軸軍を打ち破り、紅海からスエズへと攻め上った。また、エジプトに展開した陸上部隊も健闘し、アフリカ戦線は連合軍が勝利を掴む。
次の作戦目標は地中海制圧とイタリア打倒である。
まずはシチリア島を占領すべく日英上陸船団が地中海を渡り始めるが、枢軸軍がそれを座視するはずもなかった。イタリア海軍に加え、ドイツ海軍も強力な艦隊を差し向けてきたのだ。
対する連合艦隊もついに切り札を投入。戦艦大和・武蔵が地中海に進出する。
地中海の覇権を握るのは――!?

紅海からスエず運河を突破し、ポートサイドを確保した日英連合軍はアレキサンドリア、カイロへと軍を進めて順調にエジプトを占領していきました。
その後、北アフリカ沿岸を西進するのですが、枢軸軍が守りを固めている*1トブルクを攻撃するのではなく、地中海を通って迂回しベンガジに上陸。
史実の太平洋戦争でアメリカ軍が取った飛び石作戦ですね。地中海の制海権は日英軍が有利なので、補給を断つのみ。同時にシチリア島まで空襲をかけます。
一連の作戦が功を奏してイタリアは追い詰められていきます。
シチリア島を巡る戦いで独伊も虎の子戦艦を出撃させますが、日本海軍も大和・武蔵がはるばるやってきていました。
合わせれば戦艦6隻になるはずなのに、独伊は連携取れずに各個撃破の憂き目に遭います。
もっとも、イタリアがほぼ一蹴されたのに対して、さすがにビスマルク・ディピッツを繰り出したドイツの方が善戦していましたね。
大和・武蔵vsビスマルク・ディピッツは力の入った描写(しかも苦戦)だったのに対し、イタリア軍が省略されてたところが・・・。

また、ドイツ軍が英本土を占領した際に入手した各兵器が登場しています。その多くが航空機。
東部戦線は冬季に入って膠着状態が続いていたのですが、元はイギリスの四発爆撃機ランカスターを使用して籠城しているソ連の都市へ無差別空襲を仕掛けます。
籠城側の被害は甚大でしたが、これによってアメリカの世論は反枢軸へと傾きました。
それでもアメリカが参戦するまではいかないものの、連合軍寄りになっていく描写が見られました。
ランカスター以外にもモスキートといったイギリス製の航空機が投入されていますが、本シリーズといえばアメリカが売り出した兵器を日本軍が多く使用しているのもの特徴です。
すでに運用されている戦車や装甲車両に加えて、今回は零戦の後継としてF6Fヘルキャットが艦戦として採用されました。
モスキートを迎え撃つF6F(日本名:炎風)にコルセア(日本名:熊鷹)、シチリア島の航空基地に爆撃を仕掛ける日本海軍のドーントレス。
日本製の新型機体が出てこないのは寂しいですが、アメリカ製の機体は頑丈なので、パイロットを守るという点では良いですよね。

さて、いよいよイタリアが追い詰められて、ムッソリーニが退陣したわけですが、このままドイツがずるずると後退していくのか。
アメリカが参戦していないので物量で押せません。ましてや陸上での戦いでは日英連合軍は分が悪いでしょう。
欧州に戦場の舞台を移しましたが、まだ予断を許さないようです。

*1:6号ティーガーの部隊も有り。

不手折歌 『亡びの国の征服者6 魔王は世界を征服するようです』

家族の愛を知らぬまま死に、二つの人類が生存競争を繰り広げる世界に転生した少年ユーリ。
彼は亡びゆく隣国キルヒナ王国から避難民を連れ出し、わずかな兵でクラ人の“十字軍”の追撃を振り切って初陣を勝利で飾る。
しかし隣国が滅びを迎えることは、ユーリ達の住むシヤルタ王国にもう後が無いことを意味していた。
そんな中、王都へと帰還したユーリのもとに長らく航海に出ていたハロルから吉報がもたらされる。
新大陸発見――歴史に大きく刻まれるであろうこの報せを受け、ユーリは喜びに震えながらも生存のための計画を静かに次の段階へと移行するのだった。
戦争の後処理や未来への課題は残しつつも、日常を取り戻していくユーリ達。
しかし、戦場でキャロルと結ばれたことで、ユーリを取り巻く交友関係も大きく変わっていき……?

前巻でユーリは滅亡寸前の隣国キルヒナ王国から女王の依頼で王女と避難民を連れ出し、追撃を振り切って無事シヤルタ王国に帰還しました。
そして、友人や家族との再会。鷲から落下して消息不明との報が伝わっていただけにユーリを迎えた人々の喜びはひとしおです。特にリリーの感激ぶりにはにやついてしまいます。
出征した夫や恋人、家族が無事帰還するというのはこういうことなんだなぁと深い感慨を覚えますね。

建前上は勝利を収めたということで式典が催されますが、それとは別にユーリは内密に女王に招かれて詳しい話をしました。
その際にキャロルが同席するのは当然として、次女のカーリャまでもが同席してひっかきまわすんですよね。ユーリとしては学院で冷たくあしらっていたはずなのに、なぜかカーリャはユーリにぞっこんな様子。英雄となったからというのもあるのでしょうが、後で理由がわかってきます。

そうして戻ってきた日常。
それより、こちらの世界でいう大西洋横断の旅に出ていた船が帰還して、新大陸発見の報を受けたのがかなり嬉しかったようです。*1
これで、いざという時の逃げ場所を見つけられたのは大きい。地理はユーリの前世の知識と合っていたものの、ここからが大変です。開拓を進めなきゃいけませんし、並行して秘密保持に頭を悩ませます。
経済を握る魔女家に知られたら、必ず横やりを入れてくるでしょうから。

ところで、逃避行中に結ばれたキャロルとは、帰還後は忙しくてろくに会う暇もなかったのですが、ひょんなタイミングで逢引することに。
国のトップを継ぐ王女といえど、恋をしている女の子らしさが垣間見られて良かったですね。
さらにキャロルの妊娠が明らかになり、覚悟を決めたユーリはプロポーズします。
後から思えば、ここが幸せの頂点だったんだよなぁ。
結婚を決めたことにより、両家の顔合わせ食事会が催されるのですが、これが平和の終りとも言える象徴的な事件になってしまうのでした。

少しネタバレすれば、ユーリにとって愛する人との別れであります。これ以降、黒幕たる魔女家への怒りは留まることを知らず、内戦への道を突き進みます。

今回の最後のシーンはWebで読んでいましたが、当時は大きな衝撃を受けたものです。
なろう系の小説でここまで書ききるというのはなかなかできないのではないでしょうか。
いわば魔王への一歩を踏み出すきっかけであるわけですが、半端な覚悟じゃ反応が怖くてできません。
でも、主人公にそれを乗り越えさせる展開を読ませてくれるのが作者の実力でしょう。
読む報はハラハラドキドキで、つい目が離せなくなってしまうのです。

*1:ちなみに原住民は存在せず。いない設定にした理由はあとがきに書いてある。要は原住民との接触やら対立、交渉やら書かなくてはならなくなり、本筋がずれてしまうから。

山本甲士 『戻る男』

内容(「BOOK」データベースより)
一発屋の作家・新居航生に突然届いた、タイムスリップの案内状。学生時代にいじめられっ子だったこと、女にこっぴどく振られたことなど、やり直したい過去がある航生は、詐欺だと知りながらも、申し込むことに…。異色タイムスリップ小説。

福岡市在住の作家・新居航生はタイムスリップをテーマにした『もう一つの扉』が大ヒット。漫画や映画にもなるほどで、当然次回作も期待されていました
しかし、その後は鳴かず飛ばず。というより小説すら書けずにいました。
妻とは離婚し、無職のまま暇を持て余す生活。全国的に名が知れたおかげで、たまに講演や執筆依頼が来るのですが、受ける気も起きずに断っていました。

そんな彼にタイムスリップの案内状が届きます。ある極秘に進めている研究への実験協力依頼だったのです。
実験モニターといっても、料金はこちらが払うあたりが詐欺のようで胡散臭い。
ただ、もともとタイムスリップに興味のあった航生は手紙の内容に惹かれてしまいます。
貯金を切り崩す生活といえど、大ヒット作のおかげで余裕のあった航生は引き受けることにします。
ただし、実体験をもとにした小説に仕立てることを目論んでいたのでした。

タイムスリップできるのは自分の過去。
八木と名乗る男からの一方的な連絡のみで、当日は目隠しをして連れて行かれた先はどこかのマンションの一室。事前にリラックスするための市販薬を飲んだだけ。
あとは変えたい過去を選択します。それも、歴史を変えるよう事件でなく、極力他人の記憶に残っていないような、ささいな出来事のみ。歴史に干渉するのはタブーだからです。
航生は中学2年に文化会館の裏に連れていかれて暴力を受けた日を選びました。
その日以来、なにかとイジめられるようになってしまった中学時代を変えたかったからです。
八木との会話で過去の記憶を遡っていたら、航生の意識は本当に中学時代に戻っていて、きっかけとなる出来事の直前にいました。
そこで大人の精神のままの航生は勇気を出して、過去を変えてしまいます。
本当にタイムスリップして、過去を変えることができた。
航生は感動しますが、第三者の目がなかったので証拠はありません。あくまでも当事者の記憶だけです。

こんな経験をしたのならば、他に悔いている過去を変えたい。
航生はまたタイムスリップしたくなって、八木からの連絡を待ちます。
極秘の実験ということで、何度も受けられるないと言われ、二度目は金額が吊り上がりました。
そうして、航生は二度目は大学時代に二股をかけられた女性を自分からふり、三度目は小学生時代に助けられずに溺死してしまった幼女を助けました。
しかし、三度目を終えた後、八木からの連絡は絶えてしまいます。
諦めがつかない航生は「戻る男」名義でブログに体験談を綴りながら、他に体験した人物を求めます。
さらに本当に自分の過去が変わったのか、現地に行って調査を始めるのでした。

ブログを通じて航生と同じ体験をした人物が数名見つかりました。
さらに過去を知る人物に出会って話をしてみると、タイムスリップで変わった部分と変わっていない部分があって、かえって混乱してしまうのでした。


タイムマシンはフィクションだけの話。現実で時を超えるのは不可能です。
もしも過去に行った、未来から来たと言い出したら、頭がおかしいと思われるでしょう。
創作、あるいは本当にその人の頭がおかしくなって抱いた妄想であろうと。

ちょっとネタばらしすれば、本作は催眠術が鍵となっているため、厳密にはタイムスリップものとは言えないかもしれません。
まぁ、過去は変えられないもの。他人にとってはささいなことでも、本人にとっては「あの時、こうしていれば」と思える、心に棘が刺さったようなことはいくつもあります。
ありふれてはいるけど、充分理解できますね。
あくまでも一人の平凡な男の半生をテーマにしているせいか、起伏が少なくて若干退屈に感じる部分もありました。
それでも、ストーリーとしては最後まできれいにまとめられた印象は受けました。

横山信義 『連合艦隊西進す3-スエズの彼方』

英本土奪回を目指す日本・イギリス連合軍にはスエズ運河を押さえ、地中海への航路を確保する必要がある。だが連合軍の前に、北アフリカを堅守するドイツ・イタリア枢軸軍が立ち塞がる!

前巻で立ち塞がるフランス艦隊を撃破し、アフリカ北東岸の要衝ジブチを攻略した日英軍。次なる目標はエジプトです。
幾度となくUボートによる損害を出しながらも、なんとかスエズ運河を押さえるところまで来ました。
しかし、運河を出たところで敵が待ち構えているのは必定。地中海進出のためには避けては通れない難所でした。エジプト失陥を恐れるドイツ・イタリア軍も必死の防戦に努めて援軍を送ってきます。

ということで、ついに登場した6号ティガー戦車ですね。日本陸軍アメリカのシャーマン戦車を装備しています。今までの九七式と比べると、各段の性能ですが、3号戦車はともかくティガーには敵いません。
そこで意外な航空機が活躍して撃退したのが良かったですね。
陸・海軍ともにあてにならない印象のイタリア軍も、小規模となると奮戦すると言われます。今回は魚雷艇と日本の水雷艦隊という珍しい戦いぶりもありました。

とはいえ、本シリーズで多く割かれているのがUボートと対潜部隊の戦い。スエズ運河を出るのも、やはりUボートとの戦いを制する必要がありました。
日本海軍の対潜戦術も史実とはくらべものにならなくなっているでしょうね。
運河の出口を抑えた後、ついに有力な水上艦隊がやってきて、ポートサイドを巡る決戦となりました。中東方面からはイギリス陸軍。南から日本陸軍が北上して合流を目指します。

今回のクライマックスはポートサイド沖海戦。酷使されることの多い戦艦金剛・榛名だけでなく、長門陸奥の活躍が見られたのが良かったですね。今までのシリーズでは、米鋭戦艦に苦戦する場面が多かったので。
とはいえ相手はイタリアの新鋭戦艦であり、そう簡単に勝てる相手ではありません。ただ、英米海軍ならともかく、イタリアの戦艦相手に敗北するのだけは見たくないなと思ってしまいます(笑)

それにしても、日本軍の輸送範囲は長大になって大変そうですね。ジブチスエズ運河を抑えるまでは、インド洋でのUボートとの攻防があり、沈められた輸送船もかなりあったに違いありません。
アメリカが完全中立となって連合国・枢軸国への輸出で儲けているようです。日本も戦車以外に様々な軍需品を購入していますが、駆逐艦や輸送船も買い入れてそう。
さらに今回は戦時急造型の空母を量産していく描写があったので、それがイギリスやドイツ・イタリアに渡って、同型艦同士の戦いとか発生するんでしょうかね。