ダイスケ 『庭に穴ができた。ダンジョンかもしれないけど俺はゴミ捨て場にしてる 1』

ある日、家の庭に穴があいていた。
ゴミ穴にちょうどいいので、ゴミを捨てた。
家庭ごみを捨てた。
事業ゴミを捨てた。
建設ゴミを捨てた。
まだまだ穴は埋まらない…

現実に庭にぽっかりと穴が空いていたらどうするか。それも底が見えないくらいの深い穴。
根は小心者の主人公は欠陥土壌だったのかと心配になります。大地震や大雨の時に家屋が傾いてしまうのではないかと。
かといって、すぐにどうすることもできず、とりあえず埋めておくんですね。ついでに燃えるゴミを放り込んでから。
しかし、翌日になると、穴は発見した時と同じようにぽっかり空いている。
主人公は事業ゴミの処分費が浮いたとばかりに毎日せっせとゴミを放り込みます。
どんなにゴミを捨てても穴は塞がることはなく、むしろ広がっている様子でした。
中はどれだけ広い空間が広がっているのか。
そこで主人公は思い付きます。
今はどの事業者も不用品の処分に頭を悩ませている。この穴を利用して処分を引き受けてみるかと。
むしろ、どんどん穴に放り込んでいかなくちゃという思いに駆られます。
それから主人公はリサイクル業より、ゴミ処分が本業となっていきます。といっても穴に捨てるだけ。
本格的にゴミ処分を行うようになってから、なぜか主人公の体は調子が良くなっていくのでした。
どんなゴミだろうが穴に捨てるだけ。処分費用は一切かからず、人件費も自分だけ。こんなに美味い商売はありません。
そこを怪しいと見る人は出てくるわけで、ヤクザに目をつけられてしまうのですが・・・。


小説家になろう」にて掲載中のweb小説です。
庭に穴が空いて、そこは現代にできたダンジョンだった。魔物も出るけど、お宝も眠っていて・・・。
そんな内容の小説がいくつか書かれていたこともありました。
本作は脱サラして田舎に引っ込み、零細リサイクル業を営んでいる中年男が主人公で、これも同じような内容かと思わせておいて、まったく違っています。
主人公の成長というより変貌に見る「俺強え」感はありますが、どちらかというと欲望に目がくらみ、穴に引き寄せられた者たちが消えていくホラーな内容です。そこに触れてはいけない的な。
物語が進むの共に主人公の環境は拡大方向に進化していきます。主人公自身も中身はさえないおっさんなんですけど、どこか変わっていくのですよね。そこに目が離せなくなっていきます。
穴の中の描写はごく簡単にしか描かれていないので気になりますが、あえて伏せているのが不気味ですよねぇ。
地獄のような恐ろしい世界が広がっているような気がしてなりません。