横山信義 『高速戦艦「赤城」4 グアム要塞』

米艦隊による硫黄島サイパン島の日本軍基地への奇襲攻撃は苦闘の末に撃退された。戦況は一息つくはずだった。しかし、米軍は激戦の裏で密かにグアム島へ増援を送り込んでいたのだ。
これで、日米双方が互いに敵飛行場の破壊と再建の妨害を繰り返す泥沼の状態に。
それでも、機械化された米軍設営部隊の能力は日本軍を凌駕し、グアム島飛行場再建を阻止し続けることは不可能であった。
敵基地が本格稼働する前に一気に攻勢をかけ、グアム島そのものを占領するしかないと、連合艦隊はグアムに向け出撃する。
だが、米海軍も太平洋艦隊の主力戦艦部隊を繰り出し、鉄壁の布陣をもって待ち受けていたのだ――。

「現時点におけるマリアナの状況を一言で言うなら、飛行場の建設レースだな。先に飛行場を使用可能にこぎつけ、航空部隊を進出させた方が、マリアナにおける戦いの勝者になる」

前巻でサイパン島に攻勢をかけてきた米艦隊を辛くも退けた日本軍。しかし、激戦の裏でグアム島には物資が運び込まれて、着々と要塞化されていました。
双方の艦隊が退いた後は基地同士の航空戦が繰り広げられました。直接は米軍のグアム島と、日本軍のサイパン島ですが、米軍は占領したトラック島から。日本軍はパラオ島からも支援。制空権を巡る戦いは熾烈の一途を辿ります。
本国からの距離では日本に分がありますが、機械化では米軍が有利。せっかく飛行場を破壊しても、設営の早さでは米軍が圧倒します。マリアナを巡る戦況は徐々にアメリカ有利になってきたように思えました。
戦況打開を図る日本軍は機動部隊投入によってグアム島攻略を目指すことにしました。
ここに至り、さすがにアメリカ軍首脳も空母の重要性が身に染みてきたようです。とはいっても、今さら大鑑主砲主義が間違っていたとは認めることができません。
開戦以来、ヨークタウン級はことごとく沈められてしまい、それを上回る空母*1を建造してはいますが、現時点で投入できる空母は少ない状況。
米軍は戦時急造した護衛空母で戦闘機を運搬して数を揃えた上、最強クラスのサウスダコタ級を始めとする戦艦部隊を派遣。準備万端で待ち構えていたのでした。

前哨戦では機動部隊が加わって、グアム島の制空権を巡る航空戦。双方損害を出して、次は戦艦同士の戦いとなります。
米軍は戦艦6隻繰り出したものの、航空戦で4隻が損傷をうけます。それでもサウスダコタ級2隻が無傷なので強気です。一方で日本軍は長門、赤城に旧式戦艦を加えて数は上回るものの、性能では不利は否めません。
そんなわけで激しい水上戦が行われます。

なんだかんだで勝ちはするものの、日本軍の消耗は大きいですね。イギリスからの技術供与もあって優位に進んでいますが、今後はアメリカが物量で押してくるのは確実。
毎回思うのですが、戦争の落としどころをどうするのか。正攻法じゃ無理だから、国外の政変を起こすのかな。
あと、最後に登場した巨大戦艦を倒すことでケリをつけるような気がします。

*1:おそらく史実のエセックス級。ただし数は抑えられていると思われる。